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2016年8月23日 (火)

マイナンバーカードに旧姓併記  誰にとっての「朗報」か?

 「マイナンバーカードに旧姓併記…住民票にもOK」。これは読売新聞、2016年8月21日付けの記事の見出しです。その内容は、

 結婚後も女性が通称として旧姓を使い続けやすくなるよう、政府は住民票やマイナンバーカードに旧姓を記載できるようにする。
 希望者は住民票やカードの氏名欄に、旧姓を併記できるようになる見込みだ。
 8月2日に閣議決定した経済対策に盛り込んだ。総務省は2017年度予算の概算要求に、住民票の記載事項を記録しているシステムや、マイナンバーカードを発行する機器の改修費用を盛り込む方針だ。
 <以下、略>

 夫婦別姓を求める人などにとって、一見、「朗報」のように読めますが、少し捻くれた解釈をしてみました。

■旧姓を併記するためのシステム改修はIT公共事業?

 マイナンバーカードに旧姓を併記するためには、マイナンバーカードを発行し、マイナンバー制度のシステムを管理をしているJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)のシステムの改修が必要になります。

 もちろんそれだけで済みません。旧姓を併記させるには、もとになる住民票に旧姓を登録する必要があります。先の新聞記事には、住民票にも旧姓を記載できるようにするとありますが、実際は住民票に旧姓を載せるので、マイナンバーカードにも併記できるのです。

 さて、住民基本台帳法の第七条には、住民票の記載事項が次のように列記されています。

(住民票の記載事項)
第七条  住民票には、次に掲げる事項について記載(前条第三項の規定により磁気ディスクをもつて調製する住民票にあつては、記録。以下同じ。)をする。
一  氏名
二  出生の年月日
三  男女の別
四  世帯主についてはその旨、世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯主との続柄
五  戸籍の表示。ただし、本籍のない者及び本籍の明らかでない者については、その旨
六  住民となつた年月日
七  住所及び一の市町村の区域内において新たに住所を変更した者については、その住所を定めた年月日
八  新たに市町村の区域内に住所を定めた者については、その住所を定めた旨の届出の年月日(職権で住民票の記載をした者については、その年月日)及び従前の住所
八の二  個人番号(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 (平成二十五年法律第二十七号。以下「番号利用法」という。)第二条第五項 に規定する個人番号をいう。以下同じ。)
九  選挙人名簿に登録された者については、その旨
十  国民健康保険の被保険者(国民健康保険法 (昭和三十三年法律第百九十二号)第五条 及び第六条 の規定による国民健康保険の被保険者をいう。第二十八条及び第三十一条第三項において同じ。)である者については、その資格に関する事項で政令で定めるもの
十の二  後期高齢者医療の被保険者(高齢者の医療の確保に関する法律 (昭和五十七年法律第八十号)第五十条 及び第五十一条 の規定による後期高齢者医療の被保険者をいう。第二十八条の二及び第三十一条第三項において同じ。)である者については、その資格に関する事項で政令で定めるもの
十の三  介護保険の被保険者(介護保険法 (平成九年法律第百二十三号)第九条 の規定による介護保険の被保険者(同条第二号 に規定する第二号 被保険者を除く。)をいう。第二十八条の三及び第三十一条第三項において同じ。)である者については、その資格に関する事項で政令で定めるもの
十一  国民年金の被保険者(国民年金法 (昭和三十四年法律第百四十一号)第七条 その他政令で定める法令の規定による国民年金の被保険者(同条第一項第二号 に規定する第二号 被保険者及び同項第三号 に規定する第三号 被保険者を除く。)をいう。第二十九条及び第三十一条第三項において同じ。)である者については、その資格に関する事項で政令で定めるもの
十一の二  児童手当の支給を受けている者(児童手当法 (昭和四十六年法律第七十三号)第七条 の規定により認定を受けた受給資格者(同条第二項 に規定する施設等受給資格者にあつては、同項第二号 に掲げる里親に限る。)をいう。第二十九条の二及び第三十一条第三項において同じ。)については、その受給資格に関する事項で政令で定めるもの
十二  米穀の配給を受ける者(主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律 (平成六年法律第百十三号)第四十条第一項 の規定に基づく政令の規定により米穀の配給が実施される場合におけるその配給に基づき米穀の配給を受ける者で政令で定めるものをいう。第三十条及び第三十一条第三項において同じ。)については、その米穀の配給に関する事項で政令で定めるもの
十三  住民票コード(番号、記号その他の符号であつて総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)
十四  前各号に掲げる事項のほか、政令で定める事項

 住民票に旧姓を登録するには、第七条に1項加えるか、十四項の政令を改正する必要が出てきます。

 これらの改正が済めば、市区町村は、住民登録に関わるシステムの改修を始めなければなりません。旧姓併記は希望者にのみです、全員ではありません。しかし、併記を希望する人が、例え、その市にたった1人しかいなくても、すべての住民について併記できるようにシステムを改修する必要があります。

 システム改修が必要なのは、すべての市区町村です。関連業界にとっては、間違いなくものすごい「朗報」でしょう。1市区町村100万円(そんなに低額でできるとは到底思えませんが仮に)としても18億円です。新規のIT公共事業ですね。

■旧姓併記は住民票だけ? 課税証明などはどうするのか

 ところで、市区町村は住民票を管理しているだけではありません。税や福祉、教育などに関わる様々な個人情報を管理し、住民に必要に応じて通知を出したり、求めに応じて諸証明を発行したりしています。
 もし、こうした通知や諸証明にも旧姓の併記をするとしたなら、システム改修の経費はさらに大きく膨らむでしょう。
 もちろん、例えば「課税証明には旧姓は併記しない」という選択を市区町村がとることは可能です。
 しかし、勤務先や融資先などに課税証明を出さなければならないときに、「旧姓は併記されません」では、施策として中途半端すぎます。「住民票に載っているのになぜだ」と、住民からは間違いなく苦情が出るでしょう。

■戸籍にマイナンバーを紐付ければ、旧姓併記は簡単に実現?

 旧姓併記は、これから結婚する人だけが、婚姻届の際に希望することになるのでしょうか。いくらなんでも、そんなことはないでしょうね。常識的に考えて、既婚者にも遡って適用されるでしょう。そうなれば、戸籍のデータが必要になります。住民票には旧姓は「まだ」掲載されていませんから。

 さてさて、どうするのでしょう。本人からの申請を鵜呑みにするわけには行きません。旧姓を併記して欲しい希望者に戸籍謄抄本を持参させるのでしょうか。本籍地と住所地が違っていたら手間ですね。

 それとも、政府はマイナンバーを戸籍にも紐付ける予定ですから、「役所の方で自動的にします、何の問題もありません」ということなのでしょうか?
 もちろん、マイナンバーと戸籍を紐付けるには、各市区町村の戸籍簿の管理システムなどの大規模な改修が必要です。こちらは、どう考えても数十億円単位では解決しないでしょう。

 とにかくたくさんのお金が必要なのは間違いありません。

■旧姓併記は「女性活躍の推進」事業の一環

 ところで、記事に出て来る「8月2日に閣議決定した経済対策」とは何かというと、これは「未来への投資を実現する経済対策」(PDF)のことです。

 確かに「Ⅰ.一億総活躍社会の実現の加速」の「(2)若者への支援拡充、女性活躍の推進」に、「女性活躍推進等に対応したマイナンバーカード等の記載事項の充実等(総務省)」とあります(22頁)。
 しかし、書かれているのは、たったこれだけです。記事にある住民票云々はありません。

 安倍政権の目玉施策である「女性活躍の推進」にとって、旧姓併記がどれだけ貢献するのかはわかりません。また、そもそも旧姓で困っているのは「女性だけ」との認識にも違和感があります。
 もし、この施策が「女性活躍の推進」に有効だとしても、なぜ、マイナバーカードの発行システムを構築する前に検討しなかったのでしょう。
 また、既にマイナンバーカードの交付を受けている人で、併記を希望する方は、再度交付申請を位置からやらなければなりません。
 経費、要するに国民が支払った税金の無駄遣いとしかいいようがありません。

 まあどちらにしても、「夫婦別姓を求める人」にとっては肩すかし以上の意味はないでしょう。同じお金を使うなら、併記というような姑息なことではなく、夫婦別姓を実現するために使うべきではないでしょうか。

 なお、本稿は、旧姓併記を「婚姻によるもの」として書いていますが、旧姓は養子縁組でも生じます。また、戸籍のない外国人住民にも旧姓がある場合もあるでしょう。政府は、どこまでを範囲に考えているのでしょうか。

■補足 旧姓併記の意味

 では、マイナンバーカードや住民票に旧姓が併記されたことによって、市民にはどのようなメリットが生じるのだろうか。

 旧姓を併記したマイナンバーカードや住民票の写しを見せれば、旧姓で、預金口座を開設できるのか、ローンは組めるのか、クレジットカードを取得できるのか、不動産や自動車などは購入できるのか、公的機関が交付する免許証はもらえるのか、携帯電話の契約は出来るのか。おそらく関連法の改正が必要だろうし、そう簡単にはいかないだろう。

 ところで、従業員の源泉徴収や年金・健康保険・社会保険の事務処理には、現在、マイナンバーが必要となっている。
 旧姓使用している従業員がいると、マイナンバーカードなどを使った本人確認等の事務処理が煩雑になる。もし、マイナンバーカードに旧姓が併記されていれば、雇用主だけでなく、書類の提出を受ける税務当局や市役所、年金機構、健保組合、ハローワークなどは多少は楽になるだろう。

 詰まるところ、そういう意味しかないのではないか。旧姓で働く人たちを雇用しても、煩雑にならないように、政府として手を打ちました(=女性が活躍できる条件を改善した)のでよろしくということなのではないか。

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