国税庁がFAQを変更 マイナンバーの記入がない書類を受け取るのは「番号制度導入直後の混乱を回避する」ため
2016年5月5日の「赤旗」に「マイナンバー提出強制 事業所が就業規則で 法律では拒否できる」との記事が掲載されました。
記事の内容は「法律では拒否できるはずのマイナンバー(共通番号)提出を、就業規則で提出を強制する職場が続出しています。弁護士らから、法律から外れた運用の危険や民間に任せっぱなしにする政府の無責任を指摘する声があがって」いるというものです。
この記事に関連したことですが、国税庁のWebサイトにあるFAQ「従業員や講演料等の支払先等から個人番号の提供を受けられない場合、どのように対応すればいいですか」に対する回答が書き換えられていることがわかりました。
質問の回答のうち「個人番号の記載がないことをもって、税務署が書類を受理しないということはありません」は同じです。 しかし、その理由が異なっています。
以前は「法定調書などの記載対象となっている方全てが個人番号をお持ちとは限らず、そのような場合は個人番号を記載することはできません」となっていました。
ところが、現在は「番号制度導入直後の混乱を回避する観点などを考慮し」と書き換えられ、さらに「今回マイナンバー(個人番号)の提供を受けられなかった方に対して、引き続きマイナンバーの提供を求めていただきますようお願いします」とだめ押しをしています。
「お知らせコーナー(最新のトピックスを更新しています)」に、「『番号制度概要に関するFAQ』を更新しました。(平成27年12月25日)」とありますから、おそらくこの時点で書き換えたのでしょう。
■「番号制度導入直後の混乱」が治まれば、番号記入のない書類は受取拒否か?
国税庁の姿勢は明らかに変化しています。近い将来「番号制度導入直後の混乱」が治まったとして、記入していない申告書類等は受け取らないとしてくる可能性があると見て間違いないでしょう。
◆以前(おそらく2015年12月25日まで) ※ 以下、赤字強調は引用者
ホーム>社会保障・税番号制度について>社会保障・税番号制度FAQ>国税分野におけるFAQ>国税分野におけるFAQ
https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/FAQ/04kokuzeikankei.htm#a2-10
Q2‐10 従業員や講演料等の支払先等から個人番号の提供を受けられない場合、どのように対応すればいいですか。
(答)
法定調書作成などに際し、個人番号の提供を受けられない場合でも、安易に個人番号を記載しないで書類を提出せず、個人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務であることを伝え、提供を求めてください。
それでもなお、提供を受けられない場合は、提供を求めた経過等を記録、保存するなどし、単なる義務違反でないことを明確にしておいてください。
経過等の記録がなければ、個人番号の提供を受けていないのか、あるいは提供を受けたのに紛失したのかが判別できません。特定個人情報保護の観点からも、経過等の記録をお願いします。
なお、法定調書などの記載対象となっている方全てが個人番号をお持ちとは限らず、そのような場合は個人番号を記載することはできませんので、個人番号の記載がないことをもって、税務署が書類を受理しないということはありません。
◆現在
ホーム>社会保障・税番号制度<マイナンバー>について>社会保障・税番号制度<マイナンバー>FAQ>法定調書に関するFAQ>法定調書に関するFAQ
http://www.nta.go.jp/mynumberinfo/FAQ/houteichosho_qa.htm#a12
Q1-2 従業員や講演料等の支払先等からマイナンバー(個人番号)の提供を受けられない場合、どのように対応すればよいですか。
(答)
法定調書の作成などに際し、従業員等からマイナンバー(個人番号)の提供を受けられない場合でも、安易に法定調書等にマイナンバー(個人番号)を記載しないで税務署等に書類を提出せず、従業員等に対してマイナンバー(個人番号)の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務であることを伝え、提供を求めてください。
それでもなお、提供を受けられない場合は、提供を求めた経過等を記録、保存するなどし、単なる義務違反でないことを明確にしておいてください。
経過等の記録がなければ、マイナンバー(個人番号)の提供を受けていないのか、あるいは提供を受けたのに紛失したのかが判別できません。特定個人情報保護の観点からも、経過等の記録をお願いします。
なお、税務署では、番号制度導入直後の混乱を回避する観点などを考慮し、マイナンバー(個人番号)・法人番号の記載がない場合でも書類を収受することとしていますが、マイナンバー(個人番号)・法人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務であることから、今後の法定調書の作成などのために、今回マイナンバー(個人番号)の提供を受けられなかった方に対して、引き続きマイナンバーの提供を求めていただきますようお願いします。
■番号記載ない確定申告書の受け取りも、理由を「導入直後の混乱を避けるため」に書き換え
なお、こうした「番号記載のない書類でも受け取る理由」は、確定申告書類等の受け取りについてのFAQでも変更されています。
◆以前(おそらく2015年12月25日まで)
ホーム>社会保障・税番号制度について>社会保障・税番号制度FAQ>国税分野におけるFAQ>国税分野におけるFAQ
https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/FAQ/04kokuzeikankei.htm#a2-3-2
Q2-3-2 申告書等に個人番号・法人番号を記載していない場合、税務署等で受理されないのですか。
(答)
申告書や法定調書等の記載対象となっている方全てが個人番号・法人番号をお持ちとは限らず、そのような場合は個人番号・法人番号を記載することはできませんので、個人番号・法人番号の記載がないことをもって、税務署が書類を受理しないということはありません。
◆現在
ホーム>社会保障・税番号制度<マイナンバー>について>社会保障・税番号制度<マイナンバー>FAQ>番号制度概要に関するFAQ>番号制度概要に関するFAQ
https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/FAQ/gaiyou_qa.htm#a23-2
Q2-3-2 申告書等にマイナンバー(個人番号)・法人番号を記載していない場合、税務署等で受理されないのですか。
(答)
税務署等では、番号制度導入直後の混乱を回避する観点などを考慮し、申告書等にマイナンバー(個人番号)・法人番号の記載がない場合でも受理することとしていますが、マイナンバー(個人番号)・法人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務ですので、正確に記載した上で提出してください。
■「番号を書きたくない人への強制は許さない」は大事です。しかし、根本的な解決はマイナンバー制度の中止・廃止しかありません
このように国税庁の姿勢は明らかに変化しています。近い将来「番号制度導入直後の混乱」が治まったとして、記入していない申告書類等は受け取らないとしてくる可能性があります。
「番号を書いていない申告書も受け取れ」と政府・国税庁に迫ることは確かに大事です。しかし、残念ながら「番号を書かなかった」からといって国民・住民の個人情報がマイナンバーによって名寄せされ、プロファイリングされ、選別されることは避けられません。
国税庁が、申告書類等に書かれた住所や氏名から住基ネットなどを使って、本人のマイナンバーを自ら調べることは法的には問題はなく、遅くとも2017年にはコンピューターネットワークを使って可能となります。書いてなくても勝手に調べて書くのです。もちろんこれは「人海戦術」ではなく、コンピューターを使って自動的にです。
残念なことですが、申告書類等にマイナンバーを書かないことだけでは、根本的な解決とはならないのです。マイナンバー制度の中止・反対こそが唯一の解決策です。
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