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« マイナンバーで海外資産の把握はやはり困難 -パナマ文書で首相が辞任したアイスランドにも番号制度はあった! | トップページ | 「マイナンバーカードを健康保険証に」は、政府・与党連絡協議会が2007年に構想した社会保障カードが出発点 »

2016年4月14日 (木)

「あなた 会社(学校)辞めますか、それともマイナンバーカード持ちますか」の恐怖の選択が今そこに  企業・学校での一括申請を薦める総務省

 以前、「マイナンバーのカードの一括申請、会社だけではなく、学校法人や医療法人、社会福祉法人、宗教法人でも可能に」と題した記事を書きましたが、総務省は「企業や学校等でのマイナンバーカードの一括申請」のリーフレット(PDF)を作り、ウェブサイトで公開しています。
 さて、どんなことが書かれているのでしょう。

■一括申請には、2つのやり方が

 まず、ウェブサイトの方ですが、こちらは「マイナンバーカードの交付・申請方式について」のところで、一般的な方法の説明のあとに、次の様に書かれています。

 このほか、企業や学校等でマイナンバーカード交付申請書を取りまとめ、個人番号カードの申請を一括して行うことができます。また、市町村と調整のうえ、企業や学校等に市町村職員が出向き、本人確認を行い一括して申請を受け付けることができます。

・ 企業や学校等でのマイナンバーカードの一括申請についてはこちら(リーフレット)PDF

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 一方、リーフレット(PDF)はどうでしょう。上の方に「従業員や学生等が個人番号カードを取得するメリット」が書かれています。そして、その下には「交付までの業務フロー」として、一括申請の2つのやり方が書かれています。これは先に紹介したウェブサイトの記述を詳しくしたものです。
 市役所ではシステムの不具合などにより、交付が中々進んでいないようですから、受け取る側から見れば「case2」の方が楽で確実ですね。
 もっとも求められた市区町村にはたいへんな負担となるでしょう。はたして市区町村は、対応できませんと断ることはできるのでしょうか。

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■一括申請のメリットを強調するリーフレット

 では、「従業員や学生等が個人番号カードを取得するメリット」は何でしょうか。リーフレットは、次の3点をあげています。

(1)現在発行している社員証・学生証を個人番号カードに一元化することが可能です。

(2)ICチップを活用して、個人番号カードに社員向け・学生向けの独自のサービスを搭載することが可能です。

(3)ICチップを活用して、従業員のマイナンバーの収集が必要な場面で、正確かつ効率的な収集を行うことが可能です。

 この記述の下には「個人番号カードの交付は個人の自主的な申請に基づくものです」という注意書きがあります。白々しいですね。
 (1)にあるように勤務先(通学先)が社員証(学生証)に一元化してしまえば、「私はマイナンバーカードはいりません。これまでの社員証(学生証)を使います」は許されないでしょうし、そうした主張も困難でしょう。「自主的な申請」など現実的にはあり得ません。

 結局、「会社(学校)辞めるか、マイナンバーカード持つか」を迫られることになります。

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■マイナンバーカードのICチップを利用

 (1)の社員証・学生証への一元化は、カード券面の利用だけでも可能です。しかし、メリットの(2)はそれに飽き足らず、カード内のICチップの独自利用を図るものです。
 ICチップについては、下記の図(内閣官房社会保障改革担当室「マイナンバーの概要について H27.10.7講演資料」(PDF)17枚目より)を参考にしてください。

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 ICチップの独自利用を総務省が具体的にどのように想定しているのかわかりませんが、例えば社員食堂の利用状況(料金請求、健康管理?)や、成績の記録(保護者への提供)などに使われるようになるかも知れません。

■「ICチップの民間開放」は法律上すでに可能に

 こうしたICチップの独自利用は、番号法18条2号の規定、及び、施行令18条2項の4項に基づくいわゆる「ICチップの民間開放」で実現されます。

 番号法

第十八条  個人番号カードは、第十六条の規定による本人確認の措置において利用するほか、次の各号に掲げる者が、条例(第二号の場合にあっては、政令)で定めるところにより、個人番号カードのカード記録事項が記録された部分と区分された部分に、当該各号に定める事務を処理するために必要な事項を電磁的方法により記録して利用することができる。この場合において、これらの者は、カード記録事項の漏えい、滅失又は毀損の防止その他のカード記録事項の安全管理を図るため必要なものとして総務大臣が定める基準に従って個人番号カードを取り扱わなければならない。
 
一 市町村の機関   地域住民の利便性の向上に資するものとして条例で定める事務
 
二 特定の個人を識別して行う事務を処理する行政機関、地方公共団体、民間事業者その他の者であって政令で定めるもの   当該事務

 番号法施行令

第十八条  略
 
2  法第十八条第二号の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
 
 一 ~ 三 略
 
四  国民の利便性の向上に資するものとして総務大臣が定める事務を処理する民間事業者(当該事務及びカード記録事項の安全管理を適切に実施することができるものとして総務大臣が定める基準に適合する者に限る。)

■従業員みんながマイナンバーカードを持参すれば、番号集めも楽チンだよね

 メリットの(3)は勤務先、通学先が、番号法にもとづき個人番号関係事務実施者などとして従業員、学生(生徒)の個人番号を収集する際に、通知カードを持ってくる者や「住民票の写し(個人番号記載)」を持ってくる者がいると事務が複雑になりコストがかかる、しかし、全員がマイナンバーカード持参してくれるなら手間がかからずに便利かつ正確になりますよという話ですね。

 マイナンバーカードの交付の際にシステムの不具合等によって混乱が起きている現状では、一括申請されても市町村が対応できるのかどうかは不明です。
 しかし、混乱がいつまでも続くとは限りません。やがて収まれば、一括申請の実施に向け政府・総務省が、企業や学校等へに圧力をかけることも含め動き出すことは間違いないでしょう。
 マイナンバーで儲けている企業、儲けようと政府に尻尾を振りたい企業、国には逆らえない市役所・町村役場、逆らうのが困難な国立大学・学校あたりは狙い目になるでしょうね。

■マイナンバーカードを持たない自由は、もはや風前の灯火

 このまま行けば、先にも書いたように私たちは「会社(学校)辞めるか、マイナンバーカード持つか」の選択を迫られることになります。持たない自由は、もはや風前の灯火なのです。

 なお、マイナンバーカードを健康保険証にすることを政府は計画していますが、これを実現するためにも一括申請はなくてはならない「サービス」です。詳しくは後日あらためて。

 ※ 国家公務員には、既にマイナンバーカードを持たない自由は事実上ありません。

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