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2016年4月28日 (木)

マイナンバーカードの交付遅れ問題の責任を市町村に押し付ける高市総務相 ― どこまで行っても無責任な安倍政権

 NHKニュースが、高市総務大臣が4月28日の閣議後の記者会見で、マイナンバーカードの自治体による交付作業が遅れていることについて、「早期交付に向けて支援を行う考え」を示したと報じていることを知り、「支援」はおかしいだろうと思いちょっと調べて書いてみました。

■高市大臣はカードの交付は市区町村の業務と発言 しかし、交付は法定受託事務

 高市総務大臣が4月28日の記者会見で、述べた内容は総務省のサイトにあります。マイナンバーカードの交付がシステムの不具合により遅れている件についての発言を抜き出すと

 法的には、マイナンバーカードの交付につきましては市区町村の業務でございます。また、J-LISも地方共同法人ということでございますので、そのガバナンスや人事に対して、私どもが何か権限を持っているものではございません。

 しかし、マイナンバーカードの交付事務(番号法17条1項)は、市区町村が、自らの責任において独自に執り行う「自治事務」ではありません。
 番号法第44条によれば、「第一号法定受託事務」、すなわち 「国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるもの」(地方自治法2条9項1号)です。市区町村が「自らの意思」で「自主的」に行っているものではないのです。
 
 また、マイナンバーカードの発行など、制度に関わるシステムの維持管理を行っている J-LIS (地方公共団体情報システム機構)は、国が定めた「地方公共団体情報システム機構法」に基づく組織です。
 同法の第五条第二項には「機構の定款の変更は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない」とあることから見ても、大臣の「権限を持っているものではございません」との発言は、責任逃れだと言わざるを得ません。

番号法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)

第十七条  市町村長は、政令で定めるところにより、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者に対し、その者の申請により、その者に係る個人番号カードを交付するものとする。この場合において、当該市町村長は、その者から通知カードの返納及び前条の主務省令で定める書類の提示を受け、又は同条の政令で定める措置をとらなければならない。

第四十四条  第七条第一項及び第二項、第八条第一項(附則第三条第四項において準用する場合を含む。)、第十七条第一項及び第三項(同条第四項において準用する場合を含む。)並びに附則第三条第一項から第三項までの規定により市町村が処理することとされている事務は、地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。

地方自治法

第二条第九項第一号 法律又はこれに基づく政令により都道府県、市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第一号法定受託事務」という。) 

地方公共団体情報システム機構法

第五条第二項 機構の定款の変更は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

■市町村を「支援」と他人事のような発言も

 最初に出てきたNHKニュースにある高市大臣の「支援」発言の部分は次の通りです。

 総務省としましても、ここにきましたら、一刻も早く、申請された方の御手元にカードがお届けできるように、J-LISのシステム障害の解消を一つの契機としまして、市区町村と連携しながら、交付のスピードアップに取り組むための支援をしたいと思っています。

 市区町村が自らの意思で「自主的」に行っていることが、何らかの理由により困難になったのなら、国からの「支援」はわかります。しかし、繰り返しますが、交付事務は法定受託事務です。主体はあくまでも国であり、総務省です。市区町村は国の「命令」で、唯々諾々と従っているだけです。

 高市大臣は、マイナンバーの制度を作り、カードの交付を始めたのは誰であると思っているのでしょう。まさか市区町村が勝手に始めたとでも思っているのでしょうか。
 こうした発言は、国の責任者としてはあまりにも無責任です。

 「支援など必要ない。マイナンバーカード交付事務は国に返上する」と怒る市区町村が一つぐらいあっても良いとは思うのですが、安倍政権のもとでは、そんな勇気を出すのは無理でしょうね。

■不勉強なのは大臣だけではないようです

 ところで、この大臣発言は、日経新聞の記者からの質問に答えたものです。質問の一部を抜き出すと

 基本的に交付事務は自治体の仕事であると思うので、そこは裁量に任されている部分もあると思うのですけれども・・・

 不勉強なのは、残念ながら高市大臣だけではなかったようです。大臣もこんな記者相手なら楽で良いですね。

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