マイナンバーカードのもとである社会保障カードは、健康保険の資格確認のオンライン化構想からスタートした
「『マイナンバーカードを健康保険証に』は、政府・与党連絡協議会が2007年に構想した社会保障カードが出発点」の続きです。
筆者が、社会保障カードについて検討するために、2009年頃に作成したノートが、手元に残っていましたので、以下、追記、修正をし、解説を付け掲載します。
※ 赤字強調は筆者
■厚生労働省「医療保険被保険者資格確認検討会」による「医療保険被保険者資格確認検討会の取りまとめについて」 資格過誤によるレセプト返戻の解消方法等について検討してきた厚生労働省「医療保険被保険者資格確認検討会」(2005年8月に設置)が、2006年9月に「医療保険被保険者資格確認検討会の取りまとめについて」を公表(「表紙、目次、1~8ページ」(PDF)、「別添1~7、メンバー一覧」(PDF)) 資格過誤によるレセプト返戻を解消していくためには、
としている。 ◆被保険者証記載内容の自動転記化 被保険者証記載内容の自動転記化については、
情報の装着の方式については、
としている。 一方、ICカード化については、
とした。 ◆被保険者登録状況のオンライン照会 被保険者登録状況のオンライン照会については、
といった仕組みを提案している。 また、「この仕組みによって被保険者としての資格の有無そのものが確認できるのではなく、確認できるのは、あくまで直近時点での保険者における被保険者としての登録の有無のみであることに十分留意する必要がある」、「登録『無し』と回答があった患者が必ずしも資格喪失者であるとは限らず、窓口での事情確認等を行う必要がある。また、登録「有り」と回答があった場合でも、実際にはタイムラグ等により保険者がレセプトを受け取った時点での資格確認を行った段階で、資格無しと判断され、レセプトが返戻されることはありうる」とのオンライン資格確認の限界性も示している。 |
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【解説】
レセプトの返戻とは、審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金、及び、国民保険団体連合会)に送ったレセプトが、記載内容に不備があるなどの理由により、医療機関に返戻されることです。
その理由は様々ですが、「医療保険被保険者資格確認検討会」の資料などによれば、「資格関係誤り」を理由とする返戻は基金分(平成16年度)が約631万件(全レセプトの約0.789%)、国保分(平成15年度)が約246万件(同じく約0.456%)となっています。
「資格関係誤り」の内訳を見ると、基金分(平成16年度)において最も多いのは「資格喪失後の受診(35.3%)」で、次が「記号・番号の誤り(19.6%)」となっています。資格喪失後の受診は、退職等により既に被保険者資格が喪失し、無効となっている健康保険証を医療機関に示し、診察を受けることです。医療機関は、審査支払機関に送ったレセプトが返戻されるまで、健康保険証が無効であることを知る術はありません。一方、記号・番号の誤りは、健康保険証からカルテやレセプトへの転記が、目視による手作業で行われている限りなくすことはできません。
検討会は、インターネットを活用した「医療機関・保険薬局における受診時資格確認システム」を構築することで、こうした資格関係誤りのレセプトの縮減を図ろうというものでした。
資格過誤によるレセプト返戻の解消対策だけであれば、2次元コード(QRコード)で必要かつ十分であり、ICチップはオーバースペックであるとしているところが面白いですね。
もっとも「医療・介護・年金等を通じた総合的な機能を有するICチップを装着したカード」、要するに後の「社会保障カード」のようなものが導入されるのであれば、「このICカードに必要な機能を盛り込めば足りることとなる」としています。
なお、「取りまとめ」が指摘しているオンライン資格確認の限界性は、現在検討されているマイナンバーカードを使った資格確認においても簡単には克服されるそうにはありません。
下記の図は、「取りまとめ」に添付されている「概要」です。
この「健康保険の資格確認のオンライン化構想」による2次元コード(QRコード)を付けたカードの計画はもちろん中止となりました。では、その後は社会保障カードかというと、そうではありません。
厚生労働省は「健康ITカード(仮称)」の検討を2007年に行っていたのです。
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