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2015年12月 6日 (日)

マイナンバーカード交付時の顔認証、ソフトウェアは J-LIS から市町村に無償で配布と判明

 「マイナンバーカードの交付の際に「顔認証システム」を拒否するとカードはもらえません ただし、その法的根拠は「事務処理要領」だけ」の続編です。

 この度、総務省自治行政局住民制度課から各都道府県社会保障・税番号制度担当課
市区町村担当課宛てに発せられた2015年9月9日付けの事務連絡「個人番号カード交付時における顔認証システムの活用について」を添付されていたと思われる仕様書とともに入手(全部で8頁)しましたので、以下に公開します。

 ※ 画像はクリックすると拡大されます。

■顔認証システムで判断するのは「疑義」がある場合だけ

 1頁 「個人番号カードに添付される顔写真と申請者との同一性の判断は、カード交付時に市区町村において、目視により行われることとなりますが、同一性に疑義がある場合に、顔認証システムによる判断をあわせて行うこととし、同一性が不適切である個人番号カードの発行を確実に防止することを予定しています」とあります。
 総務省は、目視で疑義がある場合のみ顔認証システムにかけて判断するとしているようです。カードの交付を受けるもの全員をシステムにかけるのではありません。

 また、この通知は「地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項に基づく技術的助言である」としていますので、法的にいえば、市区町村は、この通知を守る義務はありません。もっとも総務省は、この通知の内容に沿った「事務処理要領」を9月29日に示していますから、市区町村は、結局のところこの通知に従って事務を行うことになります。

第245条の4 各大臣(内閣府設置法第4条第3項 に規定する事務を分担管理する大臣たる

内閣総理大臣又は国家行政組織法第5条第1項 に規定する各省大臣をいう。以下本章、次章及び第14章において同じ。)又は都道府県知事その他の都道府県の執行機関は、その担任する事務に関し、普通地方公共団体に対し、普通地方公共団体の事務の運営その他の事項について適切と認める技術的な助言若しくは勧告をし、又は当該助言若しくは勧告をするため若しくは普通地方公共団体の事務の適正な処理に関する情報を提供するため必要な資料の提出を求めることができる。

281

 ↑ 【ご参考】として「世界最先端IT 国家創造宣言工程表」からの抜粋「個人番号カードの普及・利活用の促進  2016年1月より、個人番号カードの交付を開始する(電子証明書を含めて初回交付無料)。なお、交付に当たっては、顔認証システムも補助的に活用する。」の文言が記載されています。総務省としては、顔認証システムの活用は、法的な根拠はないが、この2015年6月30日閣議決定された方針が根拠なので従えよと言うことなのでしょう。

■顔認証システムでないと同一性の判断ができないカードは、身分証として不適切では?

 2頁は別紙1「個人審号カード変付時における顔認証システムの活用について」です。

 個人番号カードの顔写真が「所持者との同一性を容易に識別できる適切なものとすることが重要」だから、「同一性に疑義がある場合に、顔認証システムによる判断をあわせて行うこととし、同一性が不適切である個人番号カードの発行を確実に防止」とあります。
 これは明らかに矛盾しています。顔認証システムにかけないと同一性が判断できないカードは「同一性を容易に識別できる適切なもの」ではありません。
 例えば、カードをレンタルショップなどで身分証として使用する場合を考えてみましょう。おそらくそこに顔認証のシステムはないでしょう。店員が客とカードの顔写真を見比べて本人かどうか判断せざるを得ません。もともと「目視では同一性に疑義があるカード」ですから、「これは違うな」と思って断ることになるのではないでしょうか。顔認証システムでないと同一性の判断ができないカードは身分証として不適切ですね。

■「顔認証システムで事務負担を軽減」は、総務省官僚の机上の妄想?

 メリットとして、「②仮に不適切なカード貼付写真があった場合に、再申請が求められる申請者にとって、納得感が得られる手続となることから、国民の満足度向上にも資する。 ③申請者に対し、再申請の依頼を行う市町村において、申請者の納得を得やすくなることから、事務負担の軽減が期待できる。」とあります。
 しかし、職員が職員の主観で「疑義あり」と判断した住民に、顔認証システムにかけること自体、当該住民と職員の間にはなはだしい軋轢をもたらすでしょう。その上、機械にかけられて「これはあなたではない」と言われれば、確実にもめるでしょう。およそ「事務負担の軽減」など期待できないと思います。

282

■ソフトウェアは無償配布。パソコン、カメラ、スキャナは市区町村で準備

 3頁は別紙2「顔認証システムの活用(案)」です。

 準備として「機構において、本人確認用ソフトウェアを開発、市区町村に配布。(開発は8~10月、配布は11月、問い合わせ対応は11・12月を予定。) ※ 市区町村の負担なし。」とあります。機構は地方公共団体情報システム機構(J-LIS)のことです。
 本人確認用ソフトウェアは、J-LISからNECに発注されています。発注額は不明ですが、ワンセット1万円(到底そんなに安いとは思えませんが、あくまでも例えばです)としても1743市区町村に配れば1743万円の売上げです。

 市区町村で用意しなければならないのは、本人確認用ソフトウェアをインストールする端末、ウェブカメラ等、スキャナです。ワンセットで20~30万円ぐらいでしょうか。なお、「統合端末等とあわせて地方財政措置」とありますから、これらの経費の一部は地方交付税として措置されるようです。

■「本人の写真は、記録されない仕様」と言うが、本当なのか?

 運用には「個人番号カード交付時に、申請者とカードに添付されている写真との同一性に疑義がある場合には、申請者をウェブカメラ等で撮影するとともに、カードに添付された写真をスキャナで読み込み、顔認証システムによる判定を行う」とあります。あくまでも「疑義がある場合」に限るようです。システムにかける前に「疑義」があるかないかを職員が主観的に判断することになります。
 なお、「カード及び本人の写真は、記録されない仕様となっている」とありますが、本当にそうなのかどうかは、住民として確認する術はないようです。

283

■事務処理要領(案)ではシステムにかける対象は狭く、画像は消去としていたが

 4頁は「通知力一ド及び個人番号カードの交付等に関する事務処理要領(案)(抜粋)」と「通知力一ド及び個人番号カードの交付等に関する質疑応答集(案)(抜粋)」です。

 9月29日に市区町村に通知された「事務処理要領、質疑応答集」とは、一部異なっています。

◎通知力一ド及び個人番号カードの交付等に関する事務処理要領

9月9日時点での案9月29日の通知
 また、個人番号カードに添付された写真と交付申請者との同一性を、顔認証システムを補助的に活用しながら確認する。この場合において、まず目視により同一性の確認を行い、同一性が容易に識別できるか否か疑義があると認める場合には、あわせて顔認証システムによる同一性の判定を行う。当該判定において同一性が確認できるとされた場合には、特段の事情のない限り、交付して差し支えない。一方、当該判定において同一性が確認できないとされた場合には、交付しないこととする。
 なお、当該判定に先立ち、交付申請者に対し、個人番号カードに添付された写真と交付申請者との同一性を判定するため、顔認証システムを活用すること、及び撮影した画像は当該判定以外に利用せず、当該判定後速やかに消去することを説明するとともに、判定後、撮影した画像を、速やかに消去する。
 また、個人番号カードに添付された写真と交付申請者との同一性を、顔認証システムを活用しながら確認する。この場合において、まず目視により同一性の確認を行い、同一性が容易かつ確実に識別できると認める場合を除き、あわせて顔認証システムによる同一性の判定を行う。当該判定において同一性が確認できるとされた場合には、特段の事情のない限り.交付して差し支えない。一方、当該判定において同一性が確認できないとされた場合には、交付しないこととする。
 なお.当該判定に先立ち、交付申請者に対し、個人番号カードに添付された写真と交付申請者との同一性を判定するため.顔認証システムを活用すること、及び撮影した画像は当該判定以外に利用せず、かつ、保存されないことを説明する。

 まず「補助的」という言葉がなくなっています。補助ではなく全面的に活用するということなのでしょうか。
 案では「疑義があると認める場合」であったのが、通知では「容易かつ確実に識別できる場合を除き」に変わっています。顔認証システムにかける対象を広げたようです。
 案では「速やかに消去することを説明」とあったのが「保存されないことを説明」になっています。判定するには一時的にせよ、画像はパソコンのメモリに保存されるはずですから、案の方が正しい表現でしょう。また「消去する」ことを市区町村に求めていた文言を通知ではわざわざ削除してしまったのも不可解です。

■質疑応答集(案)では「顔認証システムは全市町村で導入」ではなかった

◎通知力一ド及び個人番号カードの交付等に関する事務処理要領に係る質疑応答集

9月9日時点での案9月29日の通知
問 顔認証システムは、必ず導入しなければならないのか。

答 原則として全市区町村で導入し活用することを想定しているが、例えば人口が少ないため申請者が少なく、同一性が容易に識別できるか否か疑義があると認める場合が少ないことが見込まれ、目視のみで十分に厳格な確認ができると判断する市区
町村においては、活用しないこととしても差し支えない。
問15 顔認証システムは、必ず導入しなければならないのか。

答 原則として全市町村で導入し活用することを想定している。
問 顔認証システムは、庁舎外において申請や交付を行う場合でも、活用しなければならないのか。また、代理人受領の場合にはどうするのか。

答 顔認証システムの活用は、一定の機器により構成され、電源が必要であり、また、一定の明るさ等も必要となる。このため、庁舎における活用を想定しているが、市区町村の判断により、庁舎以外の場所において活用しでももとより差し支えない。
 また、代理人受領の場合には、本人が出頭しないため、顔認証システムを活用することは想定していない。
問16 顔認証システムは、庁舎外において申請や交付を行う場合でも.活用しなければならないのか。また、代理人受領の場合にはどうするのか。

答 顔認証システムの活用は、一定の機器により構成され.電源が必要であり、また、一定の明るさ等も必要となる。このため、庁舎における活用を想定しているが、市町村の判断により、庁舎以外の場所において活用してももとより差し支えない。
 また.代理人受領の場合には、本人が出頭しないため、顔認証システムを活用することは想定していない。
問 申請者が顔認証システムの活用を拒んだ場合にはどうするか。

答 日常的に多くの場面で本人確認書類として活用される個人番号力一ドに添付される顔写真については、申請者との同一性を容易に識別できる適切なものとすることが重要であることを説明し、理解を求める。それでも理解されない場合には、交付しないこととする。
問17 申請者が顔認証システムの活用を拒んだ場合にはどうするか。

答 日常的に多くの場面で本人確認書額として活用される個人番号カードに添付される顔写真については、申請者との同一性を容易に識別できる適切なものとすることが重要であることを説明し、理解を求める。それでも理解されない場合には、交付しないこととする。

 9月29日の通知では「目視のみで十分に厳格な確認ができると判断する市区町村においては、活用しないこととしても差し支えない」が削られており、顔認証システムの活用を押し付けるものへと変更されています。自治体が自主的に判断することなど許さないという総務省の高圧的な姿勢の表れでしょう。

284

■市区町村で用意すべき機器の仕様

 5頁以降は「事務連絡」に添付されていた市区町村であらかじめ準備すべき機器の仕様書と思われます。

 「1 本入確認用ソフトウェア動作端末」は、顔認証のソフトウェアをインストールするためのパソコンの仕様です。販売されている一般的なパソコンなら大丈夫なようです。ただし、Windows10の載ったパソコンはダメなようです。

285

 「2 カメラ」を見ると、求められているのは、いわゆるウェブカメラのようです。有効画素数500万以上となっていますから、性能の低いものはダメです。

286

 ■利用可能なスキャナとして、PFU製とNEC製を例示

 「3 スキャナー」は、仕様とは別に、「利用可能なスキャナーの例」が示されています。

287

 どの程度のものか分かるように、「価格.COM」にリンクをと思ったのですが、残念ながらNECの製品は掲載されていませんでした。「価格.COM」へのリンクはPFU製品だけです。因みにPFUは富士通の子会社です。

  PFU FI-60F

  PFU FI-65F

 そこで、NECのウェブサイト内の該当製品へのリンクをと考えたですが、THY-67L079026 以外は案内のページを見つけられませんでした。一体どういうことなのでしょう。
 繰り返しますが、本人確認用ソフトウェアは、J-LISからNECに発注されています。

  NEC THY-67L079026 

  NEC THY-67M594004

  NEC THY-67M594002

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