「社員のみなさん、マイナンバーカードの交付申請は会社で一括しますのでよろしく」もありに (3)
さて、本稿の冒頭で「この件については全く気が付かなかった」と書いたが、これはどういうことか。実は、「勤務先企業等による一括申請方式」は、以前の政府の文書にも書かれていたのだ。しかし、今日まで、それに全く気付かなかったのだ。
■昨年11月、IT総合戦略本部分科会に提案
ネットを検索して見つけることが出来た最も古いものは、IT総合戦略本部のマイナンバー等分科会の第6回会合(2014年11月11日)に、総務省自治行政局住民制度課が提出した資料「個人番号カードについて」(PDF https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/number/dai6/siryou4.pdf)だ。
その2頁の「個人番号カードの様式、申請・交付(案)」(下図)の右下に小さく「申請時に来庁する方式や、企業において交付申請をとりまとめる方式など、多様な交付方法を用意する」とある。筆者が気付く半年以上前に、既に公表されていたのだ。
しかし、これに気付いた国民は、政府や自治体などのマイナンバー担当者を除けば何人いるのだろうか。
ところで、現在、内閣官房のマイナンバーの解説サイト(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/)にある「ご自由にダウンロードしてお使いいただける資料です」(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/kouhousiryoshu.html)からは、様々な広報資料がダウンロードできるようになっている。
ここから得られる資料には「企業において交付申請をとりまとめる方式」についての案内はあるのだろうか。
■大規模事業者向け資料には、企業による取りまとめ方式が
まず、「一般の方向け」として掲載されている、平成27年5月の日付が入った「広報資料の全体版(13ページ)」(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/download/summary_zentai.pdf)を見てみると、「個人番号カードの様式、申請・交付(案)」と同様の図はなく、7頁に「市町村長は、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者に対し、その者の申請により、その者に係る個人番号カードを交付するものとする。(第17条第1項)」とあるだけだ。
一方、「マイナちゃんのマイナンバー解説」(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/download/20150522_kaisetu.pdf)の11頁(ただし本文には書かれていない)には、マイナンバー等分科会に提出された資料と同じ「個人番号カードの様式、申請・交付(案)」の図が掲載されている。もっとも、この資料がいつから、内閣官房のマイナンバーの解説サイトにて公表されていたのかはわからない。
次に「中小規模事業者向け」とされる資料だが、ここには同様の図を載せたものは一切ない。
ところが、大規模事業者向けとされる資料のうち、平成27年5月の日付が入った「詳しい説明文入りの資料(35ページ)」(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/download/jigyou_siryou.pdf)の7頁には、この図が、そのまま載せられているのだ。
「勤務先企業等による一括申請方式」は、中小規模事業者ではなく、大規模事業者を想定したものだということなのだろうか。政府の意図は、よくわからない。
■マイナンバーでも、国民に知らせず暴走する安倍政権
どちらにしても、事実上「カード取得の強制」となる可能性が大きい「勤務先企業等による一括申請方式」を政府が用意するとしていることを、ほとんどの国民が知らないのは間違いのない事実であろう。
安倍政権は、マイナンバーにおいても、国民に情報を正しく知らせることなく、ひたすら暴走しているのだ。
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