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2015年6月 8日 (月)

民主党法案ではなかったカードへの「性別」記載を、わざわざマイナンバー法に持ち込んだ安倍政権

 2015年10月、住民登録のある全ての人(以下、「国民等」とする)にマイナンバー制度の個人番号が付番され、市町村から番号を記した紙製の通知カードが簡易書留で送られて来る。通知カードの券面には、個人番号の他に、氏名、住所、生年月日、性別が印字される。
 さらに、2016年1月からは、個人番号カードが市町村から希望者に交付される。個人番号カードはICチップの入ったICカードで、表面に氏名、住所、生年月日、性別と顔写真、裏面に個人番号が記載される。

 ※参考 内閣官房「マイナちゃんのマイナンバー解説」(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/gaiyou.html#m5

 どちらにも氏名などとともに「性別」が記載されるのだが、それは問題だとの指摘がある。

■ カードへの「性別」記載は、性的マイノリティーに対する偏見・差別を助長

 2015年5月23日付けの「赤旗」の記事「性別記載は差別助長 池内氏が番号カードで指摘」(http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-05-23/2015052305_03_1.html)によれば、日本共産党の池内さおり衆議院議員は、15日の内閣委員会で「マイナンバー(共通番号)を付した個人番号カード・通知カードの性別記載について、性同一性障害(心と体の性が一致しなかったり違和感を持ったりする人)など性的マイノリティーに対して偏見・差別を助長するものになると指摘」したとある。

 また、6月7日の「赤旗」は、「マイナンバーのカード記載 性別違和もつ人が守られない 職場に知られる/就職困難に」と見出しを付けた記事(同紙のサイトに当該記事はない)を掲載した。
2365_3 「来年1月以降、事業者は、従業員のマイナンバーを取得する必要があります。問題はその際、本人であることを確認するために、性別を記載した『個人番号カード』か『通知カード』などの提出が求められていることです」として、戸籍は女性だが男性として暮らしている方の「戸籍の性別が職場に分かってしまった場合、解雇されることもあるのでは」、「ハラスメント(嫌がらせ、いじめ)を受けるのではないか」との不安や、職場を探すときにもマイナンバーが壁になるとの心配の声を紹介している。
 記事には、池内議員の次のようなコメント(一部のみ引用)も載せられている。

 マイナンバー制度は、カードに性別を必ず記載することを法律で決めています。性別記載に苦しんでいる当事者が各地で声を上げ、国民健康保険証や、介護保険証、障害者保健福祉手帳など、不必要な性別記載の削除や裏面記載など行政を動かしてきた取り組みに逆行するものです。

■ 「性別」をカードに記載する理由

 ところで、衆議院内閣委員会の議事録(http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000218920150515006.htm)によれば、池内議員の「マイナンバー法は、番号カード、通知カードに漏れなく性別を記載することを定めている・・・この性別記載について、そもそも性別を記載することが本当に必要であったのか、真剣な検討が必要だったと思うんですが、その経過を教えてください。法律をつくるときの話です」との質問に対し、向井治紀・内閣官房内閣審議官は「マイナンバー法につきましては、基本的には住基台帳を基本としているということから、基本情報として四情報を書くというふうなことで、性別も書くというふうなことになっております」と答えている。
 基本情報というのは、住民基本台帳法に規定された「氏名、住所、生年月日、性別」のことであり、これらの4情報は住民票コードとともに、市町村から住基ネットで行政機関等に提供されている。
 政府としては、住基が基礎だから、マイナンバーも、この4情報を書くのが当然ということなのだろう。

 しかし、この答弁に反して4情報のうちの「性別」については、当初から個人番号カードに記載されることが「マイナンバー法」、正確には「法案」に盛り込まれていたわけではないのである。どういうことか。以下詳しく述べるが、その前に、そもそもマイナンバー制度はどこから出て来たのか。

■ マイナンバーの始まりは、小泉政権時代の「骨太の方針2001」

 自民・公明連立政権のもと2001年1月に経済財政諮問会議が国の機関として設置された。諮問会議は同年6月に「骨太の方針2001」を示したのだが、ここにITの活用により、わかりやすくて信頼される社会保障制度を実現するとして、社会保障番号の導入が盛り込まれていたのだ。これが、マイナンバー制度導入へ向けた具体的な検討の始まりであり、小泉内閣の時代である。

 その後、具体的な検討が厚労省を中心に進められ、麻生内閣時の「骨太の方針2009」には、社会保障番号を社会保障カードとともに2011年度中を目途に導入すると書かれるに至った。

 しかし、2009年8月の総選挙で、自公連立政権は敗北、民主党を中心とする新政権が誕生した。これにより前政権が進めてきた社会保障番号、社会保障カードの構想は、すべてストップしたかに見えた。しかし、民主党は選挙マニフェストに「税・社会保障共通の番号の導入」を掲げており、前政権の番号制度や番号カードに対する基本的な考え方は、納税者番号としての役割も盛り込む形で継承、いや、むしろより拡大されたのだ。

 民主党政権は、共通番号制度の導入に向け、社会保障・税に関わる番号制度についての基本方針」、「社会保障・税番号要綱」、「社会保障・税番号大綱」を矢継ぎ早に策定し、2012年2月には、共通番号制度の根拠法として「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」(マイナンバー法案)を野田内閣として閣議決定し、国会に提案した。

 マイナンバー法案は、成立に向け民主・自民・公明の三党による修正合意がなされた(2012年9月)。修正の内容には、番号通知のために「仮カード」の国民等への交付も含まれていた(日経新聞「共通番号法案成立へ、民自公大筋合意 情報管理の徹底明文化」2012年7月26日付け http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS25039_V20C12A7EA1000/)。

 しかし、衆院解散(2012年11月16日 野田内閣)に伴って、マイナンバー法案(以下、「民主党法案」とする)は国会で可決される前に廃案になってしまった。
 その後の総選挙では、民主党は敗れ、自民・公明による安倍政権が誕生した。
 安倍内閣は、民主党法案に多少の修正を加えた上で、2013年3月には早くも「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」(マイナンバー法案)として新たに国会に提案した。
 同法案は2013年5月9日に衆議院で、5月24日に参議院で、自民・公明・民主・維新などの賛成多数で可決され、マイナンバー法(以下、「現行法」とする)として成立した。

■ 民主党法案では、「通知カード」はなかった

 さて、民主党法案と現行法には差異が色々とあるのだが、カードに限っていうと、1つは、民主党法案にはなかった通知カードが、新たに盛り込まれたことである。これは、2012年7月の三党合意にあった「仮カード」の具体化であろう。
 民主党法案では、国民等への番号通知は「書面により通知しなければならない」としているだけであり、その書面の記載内容については何ら規定されておらず、その書面に「性別」が記載される予定であったのかどうかは分からない。
 一方、現行法は、「性別」も記載した「通知カードにより通知しなければならない」としている。

 民主党法案(http://www.cas.go.jp/jp/houan/120214number/houan_riyu.pdf PDF)

第4条 市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)は、住民基本台帳法第三十条の三第二項の規定により住民票に住民票コードを記載したときは、政令で定めるところにより、速やかに、次条第二項の規定により機構から通知された個人番号とすべき番号をその者の個人番号として指定し、その者に対し、当該個人番号を書面により通知しなければならない。

 現行法(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/pdf/260717bangouhou.pdf PDF)

第7条 市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)は、住民基本台帳法第三十条の三第二項の規定により住民票に住民票コードを記載したときは、政令で定めるところにより、速やかに、次条第二項の規定により機構から通知された個人番号とすべき番号をその者の個人番号として指定し、その者に対し、当該個人番号を通知カード(氏名、住所、生年月日、性別、個人番号その他総務省令で定める事項が記載されたカードをいう。以下同じ。)により通知しなければならない。

■ 民主党法案では、個人番号カードに「性別」の記載はなかった

 民主党法案と現行法のカードについての違いの2つ目は、個人番号カードの記載内容である。

 民主党法案

第56条 市町村長は、政令で定めるところにより、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者に対し、その者の申請により、その者に係る個人番号カード(氏名、住所、生年月日、個人番号、その者の写真その他その者を識別する事項のうち政令で定める事項(第三項及び第四項において「カード記載
事項」という。)が記載されたカードをいう。以下この条及び第七十条において同じ。)を交付しなければならない。

 現行法

第二条 7 この法律において「個人番号カード」とは、氏名、住所、生年月日、性別、個人番号その他政令で定める事項が記載され、本人の写真が表示され、かつ、これらの事項その他総務省令で定める事項(以下「カード記録事項」という。)が電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。第十八条において同じ。)により記録されたカードであって、この法律又はこの法律に基づく命令で定めるところによりカード記録事項を閲覧し、又は改変する権限を有する者以外の者による閲覧又は改変を防止するために必要なものとして総務省令で定める措置が講じられたものをいう。

■ 「性別」を記載事項としてワザワザ追加した安倍政権

 民主党法案ではなかった「性別」が記載事項の1つとして、現行法ではわざわざ付け加えられているのだ。どういうことなのだろうか。

 民主党法案で「性別」の記載がなかったのは、先の記事の池内議員のコメントにある「不必要な性別記載の削除や裏面記載など行政を動かしてきた取り組み」を反映したものと考えれば、当然だと思える。
 しかし、自民党の安倍政権による現行法は、こうした流れに逆行し、「性的マイノリティーに対して偏見・差別を助長するもの」(池内議員)となっている。安倍政権の反動性がここにも現れているのだ。

 池内議員の性別記載が必要と判断した経過をの質問に、向井審議官は「マイナンバー法につきましては、基本的には住基台帳を基本としているということから・・・性別も書くというふうなことになっております」と答えている。
 しかし、民主党法案も「住基台帳を基本」という点では現行法と何ら変わらない。この答弁は、質問への回答としては不十分だ。「性別」を記載する積極的理由とは何か、記載しなければどのような問題が生じるかなど具体的に答えるべきであろう。政府の態度は極めて不誠実なものと言わざるを得ない。
 なお、向井審議官は、現政権だけでなく、民主党政権時に既に審議官としてマイナンバー制度の担当をしていた人物である。

 なお、本稿の筆者である黒田は、カードへの「性別」の記載は問題であるとの立場を以前よりとっており、2013年3月2日、同年7月4日に、それぞれ以下のツイートを行っている。

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