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2015年5月 6日 (水)

マイナンバーとはいかなるシステムか (3) ―分類・選別・等級化のシステム

3 分類・選別・等級化のシステム

■彼・彼女は価値のある人間なのか?

 マイナンバーのもう一つの性格は、分類・選別・等級化です。プロファイリングして、「ああ、この人はこういう人やな」とわかって、それで終わりにはならないわけです。監視と何か、どういうことなのかの話です。

 誰かを見て「ああ、この人はこういう人やな」とわかっても、放ったらかしでは意味ないですよね。例えば包丁を持ってうろうろしている人を見かけて、「ああ、あの人、包丁を持ってうろうろしてるわ」ではダメですし、「人を刺したら大変やね」とシミュレーションしているだけではダメなわけです。取り押さえるなり警察に電話するなりしなければならない。
 監視は、見ることと次に行動を移すことが必ずセットになる。ですから、プロファイリングした次に出てくるのは分類・選別・等級化です。これは先ほど「真に手を差し伸べるべき者」という言葉、考え方を、社会保障費の削減という文脈の中から竹中・小泉コンビが考え出したと言いましたが、彼・彼女をプロファイリングすることで、価値のある人間なのかどうかを値踏みし、選別する、篩にかけるということをマイナンバーでこれからやっていこうというのです。

 具体的に考えられているのは、例えば社会保障や医療給付の制限、上限設定です。これは最近あまり言われなくなったのですが、「社会保障個人会計」という名前で、小泉さんの時代、盛んに言っていました。保険料と給付のバランスを個々人のレベルで取る、一生涯で使える社会保障の額に限度を設ける、そういう話です。一生涯ではなく、年間の限度額という考え方も出来ます。医療費、健保組合からの負担ですね、これをたくさん使ったら年金給付が減るとか、そういうことです。社会保障全体で給付額を見る。

 それからもう一つは、その人が一生涯で支払った保険料ともらった給付額を引き算して、もらったほうが結果的に多くなってしまった場合は遺産から取ろうという話。そういうシステムを「社会保障個人会計」と呼んでいました。これは私が妄想で言っているのではなくて、ちゃんと政府のホームページに検討していると書かれている。現在は、表に出てきていませんが、前の前の前ぐらいの政権、もう一つ前ぐらいかな、では盛んに検討がなされていました。社会保障費を削減したい考えは変わっていませんから、おそらくまた浮上してくるでしょう。

 それから、理由、原因による制限ですね。これはメタボの関係でちょっと話が出ていたりするのですが、健保組合から、メタボに関わる健診を受けろとか生活を改善しろとか書いたチラシとかパンフが送られてきたり、会社でそういった話が出たりすると思うのですが、あれをもっと極端にして個人レベルまで落として行って、メタボ対策をしていない人が将来、いわゆる生活習慣病ですね、昔の成人病、これになった場合は給付に制限をかけようというそういう考えです。

 よくテレビで、分野は違いますが、自動車の損害保険の宣伝をしていますね。走った分で保険料が決まるという。たくさん車を運転している人と少ししか使っていない人で保険料が一緒だったらおかしいから、走行距離に応じて保険料を決めましょうという話。あれと同じ考え方なのです。
 健康保険も、その人の使っている量に応じて金額を変えるかもしれないし、支給額や給付割合を変えていくかもしれないし、資産に応じて給付額、また保険料も変えていく、そんなことをやっていこうという考え方ですね。政府が好きな自己責任、自己負担の考え方です。

 これが先ほど話した小泉内閣が倒れる原因となった「国民全体で痛みを分かち合う」ではなく、特定の人たちを狙い撃ちにしていこうとそういうものですね。そのためには、一人ひとりをプロファイリングしなければいけないのです。その人がどういう人か調べるために、個人情報と繋がった番号、マイナンバーが要るのです。

■生活保護費の抑制に活躍?

 当面は、マイナンバーは、生活保護費の抑制で大活躍するだろうなと思います。生活保護申請をすると市町村は預金調査をするのですが、これからは本人の預金調査だけではおさまらないでしょう。銀行口座にマイナンバーが入りますし、それにマイナンバーは、誰と誰が同じ世帯かもわかるようなシステムとしてつくられようとしていますから、本人だけではなくて家族。家族というとお父さん、お母さんとか、そんな意味ではないですね。いわゆる三親等内の親族というやつです。
 長い間、音信不通の甥や姪が生活保護の申請をしたら、その甥や姪の預金調査だけでなく、自分の預金口座も勝手に調べられるというようなことが起きる可能性があります。もし預金がごっそりあったら、「甥や姪の面倒を見んかい、おまえ」というような話になる。もちろん今のところ法律的にそんな義務はありません。
 しかし、政府はマイナンバーの構築に多額の金を使っていますし、生活保護費の削減を進めているのですから、法律で義務化される可能性もあると思います。また義務化されなくても、申請した人に「あんたのおじさんを調べたら預金たくさん持っているね。まずそちらに相談してみたら」と、窓口で指導されるかも知れません。それだけでも生活保護の抑制になるでしょう。

 それから、これははっきりしていないのですが、固定資産税、不動産、土地や家屋にかかる税金―市町村がやっている、東京の場合は都ですが―についてもマイナンバーと紐付ける作業が、市町村で進められているようです。これは市町村で固定資産税の事務を行うために必要だということで行われているようですが、そうなってくると、三親等内の親族の誰かが生活保護の申請をやると、自分が持っている不動産についても調べられる可能性が出てくるのです。「あんたの親戚、えらいええマンションを都心に持っているやないか。そいつを頼りに行かんかい」という話になるわけですね。
 都心のマンションを持っている人に直接、「誰々の面倒を見ろ」と言われるのではなくて、むしろ最初に始まるのは申請をした本人に、「おまえのおじさんは都心にマンションを持っているじゃないか。そこへ住まわしてもらったらいい。その話をまずつけてこい。それで、おじさんがだめだと言ったらもう一遍来い」とかいう、そういう指導、いわゆる水際作戦がどんどん展開されていくだろうと思います。

 郷里から黙って出てきている人だとか、親戚とのつき合いが切れてしまった人、DVで逃げている人なんかは、そんなことはできませんから、申請を諦めてしまう。ですからマイナンバーが社会保障費の抑制という点で、最初に役に立つのは生活保護だろうと。これは早ければ数年のうちに、2017年とか18年頃には、こういった事態が新聞の紙面を賑わせているかも知れません。もっとも、そうなったとして、もうその頃にはマイナンバーでそうなるのは当然と国民は受けとめているかも知れませんね。

■国民等を適材適所に

 あともう一つ、日本の政治の行方との関係です。よく言われるのは「徴兵制に使われるのでは」です。可能性はあります。徴兵制が入る可能性はゼロではありません。しかし、徴兵制だけのためだったらこんな大層なシステムは要りません。住民票と戸籍があればできてしまう。
 戦前、戦中のコンピュータなどない時代でも極めて正確に徴兵制度を機能させていたわけでしょう。日本の官僚制度は極めて優秀なわけですから、こんなものがなかったって、やろうと思えば出来るわけです。

 では、一体徴兵制の絡みでどういうことがあるのかというと、現実的なのは徴兵ではなくて徴用だと思います。兵隊に行くのではなくて、国民が適材適所に配置される。適性にふさわしい活用を図るために使われる可能性です。別に軍隊について行って飯炊きせよとか、そういう話だけではないですよ。例えば、いま介護で人が足りなくなったりしているでしょう。そうすると、「あんたはそんな無理をしなくても、介護の職だったらつけますよ」というようなことを半ば強制的に指導をしていくような、そういう仕事につかざるを得ない―本人の希望とは別にですよ。希望している人はもちろんやったらいいわけですが―希望をしていない人も含めて、人々が賃金が安くて嫌がっている仕事なんかに事実上強制的に、外堀を埋めていくようなやり方で、それしかつけないようにしていくということも含めてやっていくだろう。そういうことにプロファイリングが生かされていくだろうなと思います。

■民間企業も分類・選別・等級化したい

 それから、先ほどから民間の話もしていますが、政府だけでなく、彼らも、国民、彼らから見ると消費者を分類・選別・等級化したいのです。昔からある「お得意さんには便宜を図る」を、さらにもっと組織的に正確にコンピュータを使ってやっていく。別な言い方をすると「カモ」をどうやって見つけるかですね。個々の消費者の傾向や特性をつかんで、その人に応じてセールスを実行していく。

 皆さん使っているかどうか知りませんが―私は行かないのですが―ハンバーガーのチェーン店のクーポンですね。携帯電話とかスマホで会員になるとクーポンが送られてくるらしいですけど、あのクーポンの中身というのは人によって違うらしいです。その人が、いつ、何を店で買っているかによって違うものを送っているようです。
 アマゾンなどのネット書店も、以前に買った本とよく似た本が出版されると、こんな本買いませんかとメールが送られてきますね。企業としては、ああいうものをもっと、個別化、精緻化したいのです。

 それから、最近、ビッグデータという言葉がニュースなどでよく出て来ます。個人情報保護法の今回の改正でも問題になっていました。我々はさまざまな個人情報をばらまいて生活しています。そうしたばらまかれた情報をもとに、どういう傾向の人は、どういった物を、いつ、どこで買うのかといった傾向をつかんで、それをマーケティングに生かしていきたいという考えですね。
 この傾向分析には、個人情報の中から個人を特定できる部分を削除した匿名情報を使うと言います。たしかにそうかも知れませんが、それで済むのでしょうか。
 平日の夕方に山手線に乗っている人たちは、どこの駅で降りて、どういう買い物をするのかといった傾向分析するためには、個々の個人を特定する情報は要りません。誰であるかなんて必要ないです。女性、男性、年齢ぐらいでいいかも知れませんね。でも、それで傾向分析できたとして、今度は具体的にどうやって働きかけるのか。分析しただけでは何の役にも立たない。

 例えば、30代の独身女性で、晩の8時ごろに毎日、山手線に乗って、新宿駅で降りる人はこういう買い物をする、こういうところに晩ご飯を食べに行く、そういう傾向が強いことがわかったとして、では、その判明したタイプの人にどうやって働きかけるのか。働きかけないとビジネスにならない。そういう傾向の人は誰なのかを、結局探し出して、その人にクーポンのメールを送りつけるなりしないと儲けにならない。ですから、個人情報を我々の知らないところで勝手に使って分析されて、最後はやっぱり「カモ」にされる、そういうことになるだろうと思います。

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