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« マイナンバーとはいかなるシステムか (4) ―排除のシステム | トップページ | マイナンバー  待ち受ける私たちの未来 (6) »

2015年5月 6日 (水)

大阪都構想に対する私の意見―大阪市を特別区に分割することが情報処理システムに与える問題点について(未定稿)

 大阪都構想に反対する学者の人たちの記者会見に刺激されて、私の意見―大阪市を特別区に分割することが情報処理システムに与える問題点について―を書いてみました。
 まだ不十分な内容ですので、今後更新して予定です。

大阪都構想に対する私の意見―大阪市を特別区に分割することが情報処理システムに与える問題点について(未定稿)  2015/5/7版

■住民情報系7システムは一部事務組合に丸投げ

 大阪市を分割し特別区にするならば、それに伴い大阪市民の個人情報に関わる処理システムを5つの特別区別に分割する必要があります。

 しかし、協定書はシステム管理については、住民情報系7システム(住民基本台帳等システム、戸籍情報システム、税務事務システム、総合福祉システム、国民健康保険等システム、介護保険システム、統合基盤・ネットワークシステム)等は、「専門性の確保、サービスの実施に係る公平性及び効率性の確保を図るため」に、一部事務組合を設けて共同処理するとしています。わかりやすく言えば、情報処理は、専門性が必要であり、分けることは困難、また高コストになる、だから事務組合を作って一括処理するということです。

 では市民はこれで納得するでしょうか。住民票や戸籍、税、福祉、健保、介護などの個人情報は、市民一人ひとりにとって外部へ漏れると困るたいへん大事なものです。市民サービスを受けるために市を信頼し市役所に預けたものです。市民は、特別区に分割されれば、当然、区役所に個人情報は移ると思っているでしょう。しかし、新たに作られる一部事務組合に市役所から丸投げされるのです。

■共同処理とはどういうことなのか

 国のIT政策や総務省などの指導もあり、複数の市町村がコスト削減などを目的に、個人情報などの処理システムを共同化する動きがあります。既に都道府県単位などで共同化しているところもあります。

 しかし、この共同化は、データセンターなどの共同化です。建物は同じでも、また使っているソフトウェアや、プログラムの基本的な部分が同じであっても、各自治体の個人情報は別々のデータベースに治められ、通信回線を介して各自治体の職員が操作し、必要な処理が日々行われています。

 ところが協定書に書かれた一部事務組合での共同処理は、こうした共同化とは意味合いが違うのではないかと思われます。建物や、使っているソフトウェア、プログラムだけでなくデータベース自体も同じということになるのではないでしょうか。現在のデータベースには、一人ひとりの市民について、どこの区民であるかの印(いわゆるフラッグ)が付けられている―例えば、此花区春日出に住むAさんには「此花区民」の印が―と思います。これが特別区に分割されると「湾岸区民」の印に変わるだけ。こうすれば比較的簡単に対応でき、協定書にある「効率的」が果たされることになります。

 では、市民にとってはどうでしょう。市民は特別区の設置により区民になったと思っている、ところがデータベース上では、あいかわらず一つのまま、ただ元の市民一人ひとりが今はどこの区民であるかの印が付けられているだけ。騙しのようなものです。

 協定書にある「公平性の確保」とは、どこの区民になってもデータベース上では同じ扱いという意味なのでしょう。

■住民の名簿を自ら管理しない特別区は自治体と言えるのか

 もっとも、データベースの問題、コンピュータの話なのだからとやかく言うほどのものでもないとの声もあるかも知れません。

 しかし、考えてみてください。自治体は、区域と住民と政府(役所)が揃ってこそ自治体です。どれかが欠けていれば自治体とは言えません。また、ここで言う「住民」は、「誰かわからないが、とりあえず何人か区域内に住んでいるようだ」ではダメです。具体的に誰が住民であるのか、そしてその住民がどのような人なのかを知っている必要、要するに詳しい名簿を役所が持っている必要があります。

 こうした名簿は昔は紙で作られ管理されていましたが、今はコンピュータが使われています。大阪市では住民情報系7システムがそれに当たります。大阪市を分割するのですから、名簿も5つに分け、それぞれの自治体が管理するのが当然です。ところが、これを分けずに一部事務組合が一括管理する、これでは特別区は一人前の自治体とは言えません。

■一部事務組合任せでは、区独自の改善・変更は困難に

 またシステムを共同処理することから、区独自の判断によるシステムの改善―サービスの向上や事務の効率化などを目的とした―などが、非常にやりづらくなるのではないかと思われます。同じデータベースで処理していれば、ちょっとした変更でも全て5区で協議し合意しなければならなくなります。帳票や画面表示のごく簡単な変更でも簡単にはできない、そんなことになってしまえば、職員の仕事は柔軟性を欠き非効率になり、サービスを受ける住民にもしわ寄せとなるでしょう。

 そもそも特別区の設置は、区に独自性をもたらすためのものとされているのですから、区によってサービスに差異が出て来るでしょう。出て来なければ分割した意味はありません。

 コンピュータによる情報処理は住民サービスの内容に応じて構築されるものです。ですから、当然ですが住民サービスの変更に伴って改変する必要が生じます。共同処理を未来永劫続けるなら、それは特別区の設置の意義と矛盾することになります。いつかは独自に処理する必要が出て来るでしょう。その時にはあらためて多額の初期投資が必要となります。各区の財政状況は同じではありません。裕福な区は、比較的容易に一部事務組合から離脱し独自のシステムを構築することができるでしょう。しかし、そうではない区はどうなるでしょう。詰まるところ、お金のない区だけが、自由度のないシステムを共同で使い続ける一部事務組合に残るということになります。

 なお、大阪市のままであれば、当たり前ですが、こうした分割のための経費は必要ありません。

■特別区へ対応するための移行期間は確保されるのか

 特別区に移行するのは2017年4月1日です。その日にはシステムの移行も行われます。果たして混乱なく移行できるのでしょうか。現在の区役所は、新しい特別区の区役所(本庁)になるもの、支所になるものに分かれます。また手狭なため一時的にしろ別のビルを借りるところもあるでしょう。どちらにしても、現在の区役所が持つ機能は変わります。それに伴って各区役所のシステムの変更も必要です。

 ここには大きな問題が立ちふさがっています。移行期間です。3月31日の夜に、備品を移し、看板を書き換えただけでは、翌日から特別区としての仕事を始めることは出来ません。システム変更には必ず移行期間が必要です。もし、市役所、区役所を数週間(最低でも数日)程度閉めることができるのなら、システムのテストをやり、不具合を直すこともでき、比較的簡単に移行を終えることも可能かも知れません。

 しかし、一晩で変更となればどのような事態になるのか想像すらできません。朝になっても住民票の写しが発行できないとか、システムがダウンしたままで、職員のパソコンの画面が真っ暗といった事態もあり得ます。

■新しい住所への移行は間に合うのか

 また、システムの移行には、画面表示や帳票等への印字を新しい住所に変更することも含まれます。新しい住所がいつまでに決まるのかはまだわかりません。万が一、住民との間でもめるようなことがあって、特別区発足直前にまでずれ込むようなことになればどうなるでしょう。システムの変更が間に合わない、そんなこともあり得るでしょう。

 区役所から区民への通知、例えば納税通知などが旧住所のまま送られるとか、住所変換にミスが生じて大量の返戻や、遅配、誤配が出るかも知れません。

 政令市を特別区に分割した経験など誰もありません。住民情報の処理システムを合併などに伴って統合した例はいくつもありますが、分割をした例などありません。システムが様々なトラブルや不具合に見舞われることは、もはや間違いないでしょう。もちろんトラブルの中には、混乱による誤操作等を原因とした個人情報の流出も、残念ながら想定せざるを得ません。

■マイナンバーとの並行作業は可能か?

 マイナンバーの関係で言えば、2016年の稼働に向けて、おそらくシステムに関わる現場は、既にてんてこ舞いの状態でしょう。そこに投票の結果次第では、5月末から2017年4月に向けた準備が加わるのです。あまりの忙しさに、職員の中から何人もの病人が出てもおかしくない状態になると思います。

 マイナンバーの個人番号通知は、今年の10月ですから現在の大阪市のシステムで行うことになります。2016年1月から始まる希望する市民への個人番号カード(写真付ICカード)の交付や、税・社会保障関係での番号利用も、現在のシステムで行うことになります。
 ところがマイポータルや、自治体間のシステム連携は2017年開始の予定です。ちょうど特別区がスタートするときです。当然、大阪市も、その後に出来る特別区もその対応が必要です。何らの問題もなくスムーズに行くとはとても思えません。

 なお、大阪市として発行した個人番号カードは、特別区に変わる時点で表面に記された住所を変更する必要があります。おそらく数十万枚発行済みでしょう。どう対処するのでしょうか。

■システム移行は後回しになる可能性

 ところで、特別区に向けた準備にしろ、マイナンバーに向けた準備にしろ、これらは情報システムを管理している部署だけでは出来ません。住民票や戸籍、税、福祉、健保、介護など、いわゆる現課との綿密な協議や打ち合わせが必要です。帳票一枚、画面一つ作るにしろ、勝手にできるわけではありません。

 果たして、現課の職員が、システム担当者とのこうした協議や打ち合わせに充分な時間を割けるのでしょうか。現課の職員が、目に見えるものへの対応に追われれば、直接見ることなどなく、スイッチを入れれば動いて当然と思っているシステムへの対応など後回しにされるのではないでしょうか。しかし、特別区への移行という締め切りは、絶対に延ばすわけにはいきません。

 そのしわ寄せは市役所、区役所の職員に及ぶだけではありません。システム管理には多くの民間企業の社員―何次にも渡る下請けや、非正規や派遣労働者等々も含め―が関わっています。そうした人の中にも過労などによる病人が必ず出て来るでしょう。そして最終的には特別区の区民にも、サービスの低下や、権利侵害など様々な弊害が訪れることになるでしょう。

■個人情報の処理は自治体が責任を持つべき

 最初にも述べたように、住民の個人情報は、絶対に漏えいさせてはいけません。また情報の毀損や消失もしてはなりません。万が一、漏れたり、誤ったり、なくなったりすれば、住民に取り返しの付かない損害を与える可能性があります。

 ですから、個人情報を含む情報の処理は、当該自治体が責任を持って行うべきものです。それを分割の困難性や高コストなどを理由に、具体的な議論や検討なく安易に事務組合に預けてしまうような行為は、住民に対して責任を持つ自治体として、あまりにも無責任と言わざるを得ません。

 今回の大阪市で行われようとしている大阪市を廃止して、特別区にする案は、住民情報の処理の面から見ても、以上のようにたいへんな深刻な問題をはらんでいます。同時に、情報処理システムの移行に多大なコストをかけたところで、それは住民サービスの改善には全く繋がりません。むしろ流出などが生じる危険性を増すだけです。

 わたしは、以上の点から大阪市の廃止、特別区への移行は中止すべきだと考えます。

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