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2015年5月30日 (土)

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ブログ記事一覧

拙著が出ました!

 拙著『マイナンバーはこんなに恐い! 国民総背番号制が招く“超”監視社会』が、日本機関紙出版センターから出版されました。

 マイナンバー制度の狙い、問題点などを明らかにしています。ご購入のほどよろしくお願いします。

 Amazon『マイナンバーはこんなに恐い! 国民総背番号制が招く“超”監視社会

365_2

2015年5月30日 (土)

日本における番号制度の歴史に関するメモ 「事務処理用統一個人コード」から「マイナンバー」まで

 黒田充が作成した「日本における番号制度の歴史に関するメモ」です(未定稿)。


 

0.国民総背番号(制度)とは何か

(1)国民総背番号としての要件

 国民に広く番号を付ける制度を「国民総背番号(制度)」と呼ぶ場合があるが、国民総背番号と呼ぶには次の要件を満たしている必要があると考える

 ①番号が、国等の行政機関によって、全国民に重複することのなく、また漏れなく付けられていること

 ②番号は、国等の行政機関によって、一元的に管理され、番号だけで個人を正確に特定できること

 ③番号は、国等の行政機関などにおいて、多目的に利用されていること

 ④番号をキーにして、国民の個人情報を集約する、いわゆる名寄せができること

(2)要件を満たす番号

 (1)の4つの要件を満たす国民総背番号に最も近いものは、基礎年金番号と住民票コードである

  基礎年金番号  ①は年金加入者に限定、②は概ね該当、③と④は該当せず

  住民票コード  ①と②に該当、③は部分的に該当、④は該当せず

 (1)の要件すべてを満たす番号制度は、日本にはまだない。しかし、2015年10月に付番されるマイナンバー(社会保障・税番号)は、これらをすべて満たす

1.番号制度導入の検討開始

Nagare

(1)「政府における電子計算機利用の今後の方策について」の決定

 1968年、電子計算機の利用に関する調査研究を行うなどとする「政府における電子計算機利用の今後の方策について」を閣議決定

 当時の政府は、電子計算機利用の推進を行政改革の一環として位置づけていた

(2)「事務処理用統一個人コード設定の推進」の決定

 この決定を受け、行政管理庁を中心とする「関係七省庁会議」(行政管理庁、大蔵省、通産省、文部省、郵政省、科学技術庁、経済企画庁)と、工業技術院が全省庁を集めた「電子計算機利用に関する技術研究会」が発足。1970年には、「事務処理用統一個人コード設定の推進」など、今後のコンピューター利用に関して政府が取り組むべき具体的な事項を決定した

(3)「各省庁統一個人コード連絡研究会議」が発足

 1970年、行政管理庁ほか関係12省庁による「各省庁統一個人コード連絡研究会議」が発足し、その導入に向けた研究が開始された

 連絡研究会議は、1971年末までに全国民に統一個人コードを付け、1975年に全面的な実施を計画

 しかし、国民総背番号制への国民の反発もあり、その後、議論は立ち消えとなった

2.グリーンカード導入の検討と挫折

(1)グリーンカード(少額貯蓄等利用者カード)制度とは何か

 マル優(少額貯蓄非課税制度)の対象とされる非課税貯蓄の不正利用を防ぐため、これらを利用しようとする者に、金融機関(郵便局を含む)へのグリーンカードの提示と氏名、交付番号の告知を義務付けることで、本人確認を確実に行おうというものであった

 カードは、本人(在留外国人を含む)の申請に基づき国(国税庁)が交付

 カードには、交付番号、氏名、貯蓄の受入機関等の名称及び最高限度額などを記載

(2)グリーンカード制度が提案された背景

 1978年当時の政府は、「一般消費税」の導入の前提条件として、利子・配当課税に対する源泉分離課税制度を廃止し、総合課税化を目指していた・・・課税の不均衡を是正し、公平を図る

 総合課税化を図るには、利子・配当所得の適正な把握のための「納税者番号制度」の導入が必要であるとしていた(同年、政府・税制調査会「昭和54年度の税制改正に関する答申」)

 ところが、納税者番号制度導入に対する社会的反発は非常に強く、その代案として1979年に政府はグリーンカード制度を提案した

 利子や配当の「本当の受取人が誰であるか」をグリーンカードを使って確認(本人確認)する

 マル優を利用しない者についてもカード提示を求める

 金融機関(郵便局を含む)は国税当局に支払調書を提出し、国税当局はカードの交付番号を使って名寄せを行い、国民個々の所得を把握する

(3)グリーンカード制度の挫折

 1980年3月末に、制度の根拠法である所得税法改正案が国会で可決され、1984年1月から実施されることになった

 しかし、経済界・金融界を含む各界からの反対と、それに対する政治的妥協により一度も実施されることなく、1985年3月には廃止法案が可決されてしまった

 国民からの批判 ・・・ カード(番号)交付は任意だが、預金口座を持たずに生活するのは一般的ではなく、カード交付を受けざるを得ない → 強制と大差なく、これは国民総背番号制度である

 海外への資金流出等の懸念も

3.納税者番号制度の導入をめぐって

(1)納税者番号制度とは何か

 グリーンカード導入のきっかけとなった「納税者番号制度」の定義は一様ではないが、例えば

 ◆財務省のWebサイト http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/tins/n03.htm

 税務面における「番号制度」とは、国民一人一人に一つの番号を付与し、

 (1) 各種の取引に際して、納税者が取引の相手方に番号を「告知」すること

 (2) 取引の相手方が税務当局に提出する資料情報(法定調書)及び納税者が税務当局に提出する納税申告書に番号を「記載」すること

 を求める仕組みである。

 これにより、税務当局が、納税申告書の情報と、取引の相手方から提出される資料情報を、その番号をキーとして集中的に名寄せ・突合できるようになり、納税者の所得情報をより的確に把握することが可能となる。

(2)納税者番号制度導入をめぐる議論

①政府・税制調査会「昭和54年度の税制改正に関する答申」 1978年

 「利子・配当所得の適正な把握のためいわゆる納税者番号制度の導入を検討すべきであるとする意見」が出されたことを明らかにした。ただし、現実の問題は難しいとして、事実上棚上げに

②税制調査会「利子配当・土地税制特別部会」報告 1979年

 「納税者番号制を導入するために十分な環境整備が行われているとはいいがたい……現実を踏まえ、課税貯蓄及び非課税貯蓄双方に通ずる本人確認、名寄せのための現実的かつ有効な方策」としてグリーンカード制度の採用が適当であるとした

③政府税制調査会「納税者番号等検討小委員会報告」 1988年12月

 再び消費税導入の前提として、竹下内閣において納税者番号の議論が浮上。納税者番号等検討小委員会を設置(1988年3月)

 報告の内容は、(1)納税者番号制は、導入されるとすれば、基本的にどのような仕組みになるのか、また、どのような仕組みがわが国に妥当なのか、(2)有価証券、預貯金、不動産取引など各々の納税者の所得・資産にかかわるすべての情報を対象とするが、プライバシー権についてはどう考えるべきものなのか、(3)コスト計算の面から、課税庁のみならず他の行政機関も広く利用できる制度とすること、(4)民間での利用についてはどう考えるべきものなのか等、を骨子とする。実質的には、納税者番号制を議論する上でのたたき台としての役割を担うものといえる。(石村耕治『納税者番号制とプライバシー』1990)

④具体的進展が見られなかった導入へ向けた議論

 納税者番号等検討小委員会は1988年12月に報告をまとめた後、1992年11月にも報告を出したものの政府は納税者番号制度に向けた具体的な動きを取ることはなかった

 動きがない背景について、森信茂樹・中央大学法科大学院教授は「税制当局にはこの後遺症から、納税者番号制度は総論で賛成していても、いざ導入となれば大変な抵抗がある、という強迫観念があり、自ら前面に出てそのメリットを述べていくということを差し控えている。政府税制調査会における議論がほとんど進展していないのはその現れである」(森信茂樹「納税者番号制度の本格的議論の開始を」『国際税制研究』22号、2009年6月)としている

 なお、利子・配当所得への課税については、その後、政府税制調査会は分離課税とすることが望ましいとの考えをとるようになり、納税者番号導入の目的として総合課税化があげられることはなくなった

 所得を勤労所得(累進税率で課税)と資本所得(比例税率で課税)に二分し、課税する二元的所得税論

⑤マイナンバー(社会保障・税番号)制度

 2015年10月に全ての国民と在留外国人に付番することとなっているマイナンバー(社会保障・税番号)は、税分野での利用(=納税者番号)も想定されている

(3)納税者番号制度の限界

①納税者番号を導入しても、正確な所得捕捉を完全に行うのは困難

 例えば、事業者の所得をもれなく把握するためには、売上げと仕入れを捕捉する必要があり、消費者が店でものを購入するごとに、店から店の納税者番号の告知を受け、購入の金額・日時等の情報を、消費者が税務当局に提出(送信)するシステムが必要 → 実現するには膨大なコストと手間がかかる

②政府自身も納税者番号制度の限界を認めている

 例えば、政府税制調査会「平成22年度税制改正大綱」(2009年)

 一般の消費者を顧客としている小売業等に係る売上げ(事業所得)や、グローバル化が進展する中で海外資産や取引に関する情報の把握などには一定の限界があり、番号制度も万能薬ではないという認識も必要

4.住民登録制度と住基ネット

(1)住基ネットと住民票コード

 1999年の住民基本台帳法改正により、住民基本台帳ネットワークが構築され、住民登録されている全ての国民に対して、識別番号として住民票コード(11桁の数字)を付番し、住民票に記載

(2)住民記録システムのネットワークの構築等に関する研究会

①研究会の発足

 市町村が個別に保有する住民基本台帳(住民票)を全国レベルでネットワーク化し、全ての国民に識別番号を付ける構想が自治省(現、総務省)から浮上

 1994年8月、「住民記録システムのネットワークの構築等に関する研究会」が自治省行政局長の私的研究会として発足

②最終報告の提出

 住民基本台帳を基礎とした、市町村や都道府県の区域を越える本人確認のためのネットワークシステムの構築についての調査・研究を進め、1996年3月に最終報告書(現在の住基ネットの原型となる)を提出

③懇談会の開催

 自治省は、1996年に各界の代表者から最終報告書に対する意見を聞く「住民基本台帳ネットワークシステム懇談会」を開催(3回)し、12月に発言要旨を分類整理した「意見の概要」を公表

(3)住民基本台帳法の一部改正と住基ネットの稼働

 1997年6月 自治省「住民基本台帳ネットワークシステムの構築について(住民基本台帳法一部改正試案)」公表、意見募集

 1998年2月 「法律案の骨子」公表、意見募集

 1998年3月 「住民基本台帳法の一部を改正する法律案」国会提出

 1999年8月 自民党、自由党、公明党などの賛成多数で可決、成立し、同年8月18日に公布

 2002年8月 住基ネット第1次稼働 国民(住民票)への住民票コードの付番と通知。行政機関等への本人確認情報の提供開始

 2003年8月 住基ネット第2次稼働 住民票の写しの広域交付、転入転出手続の簡素化の開始。住民基本台帳カード(住基カード)の交付開始

 2012年7月 在留外国人にも対象を拡大

(4)住民票コードと個人識別

 住民票コードのシステムは、日本で最初の全国民を対象とした番号制度である

 住民票コードによって、全ての国民(ただし住民登録のある)を確実に正確に識別可能となった

 しかし、住民票コードは、法的な制約により個人情報の名寄せには利用できない。納税者番号としての利用も不可。また民間利用も禁止されている

(5)住民基本台帳カード(住基カード)

①住基カードの概要

 住民の請求に基づき、希望者に市町村が交付(2003年8月~)。有効期間は発行の日から10年間

 住民は「写真付き」(氏名・住所・生年月日・性別を表面に記載)か「写真なし」(氏名のみ記載)かの2種類から選択。カード券面に住民票コードは記載せず。交付手数料は、概ね500円。無料の市町村も

 交付枚数は、2014年3月末現在で累計約834万枚(有効交付枚数約666万枚)

 ICチップ(Integrated Circuit)の内蔵されたICカードを使用

 ICチップには住民票コードと暗証番号(4桁の数字、交付時に設定)を記録。氏名・住所・生年月日・性別等の情報は記録していない

②提供されるサービス

 身分証明書として利用

 銀行口座の開設、郵便局等での荷物の受け取り、携帯電話の購入など

 電子申請・電子申告での本人確認(公的個人認証サービス)

 市町村の条例制定による独自利用 全国202市区町村(2013.4現在)

 証明書自動交付機、印鑑登録証、図書館カード、公共施設予約、コンビニでの住民票の写し等の交付など

③個人番号カードへの移行

 2016年1月からはマイナンバー制度による「個人番号カード」の交付が始まり、住基カードは廃止され個人番号カードに移行(サービス、機能等)する

5.社会保障番号と社会保障カードの導入をめぐって

(1)社会保障番号とは何か

①新たな番号制度の導入構想が浮上

 2001年頃より政府において住民票コードとは別の新たな番号制度である社会保障番号制度導入の検討が始められた

 住民票コードは、個人情報の名寄せには利用できない。民間利用も禁止されている

 社会保障番号は、社会保障にかかわる様々な行政機関や関係事業者に存在するデータベースにリンク(紐付け)されることで、記録されている個人情報の名寄せを行うものであった

②「社会保障番号」は、社会保障制度共通の番号

 社会保障制度毎に番号が違うため、社会保障サービスを一元的に処理できない

 社会保障制度 年金、健康保険、福祉、介護、生活保護、公衆衛生、労働保険、医療など

 年金:基礎年金番号、健康保険:被保険者証記号番号、介護保険:被保険者証番号

 社会保障番号は社会保障制度共通の番号とし、社会保障制度に関わる個人情報の名寄せを行うことを目的に全国民に付番される

③導入を方針化したのは経済財政諮問会議

 経済財政諮問会議は、当時の自公政権が取り組んでいた構造改革(新自由主義的改革)の方針を議論し決定するため、2001年1月に設置された国の機関。議長は総理大臣。2001年以降、毎年、「骨太の方針」を策定

 「骨太の方針2001」に、ITの活用により、わかりやすくて信頼される社会保障制度を実現するとして、社会保障番号の導入が盛り込まれた

(2)社会保障カードとは何か

①社会保障番号を活用するための「社会保障カード」

 社会保障番号は、新たに交付する社会保障カードに本人識別情報として記録される

 社会保障カードに記録されている本人識別情報をもとに、社会保障にかかわる様々な行政機関等のデータベースを検索し、記録されている個人情報を収集し、名寄せする

②導入が構想されていた社会保障カードの概要

 1枚のカードで、健康保険証、介護保険証、年金手帳の役割を果たす

 2011年度中を目途に市町村長が、全ての国民と在留外国人に交付

 本人の顔写真を付けることで、身分証明書としても利用可

 ICチップを内蔵したICカードとする

(3)社会保障カードが実現するサービス

 厚生労働省・社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会「社会保障カード(仮称)の基本的な計画に関する報告書」(2009/4/30)によると

 自宅等からいつでも自分の年金記録(保険料支払額、将来の受給額等)などの閲覧ができる

 医療機関の窓口で医療保険資格(健康保険加入者資格の有無など)等の確認ができる

 ただし、介護保険での役割については具体的なイメージが示されなかった

(4)社会保障番号・カードが出て来た背景

①年金記録問題と、その解決策

 2007年5月、払い主不明の年金保険料納付記録が約5000万件、コンピューターに記録されず紙台帳のまま放置されている記録が約1400万件あることが発覚

 原因は、社会保険庁(現、日本年金機構)の年金記録のずさんな管理

 基礎年金番号(1997年~)を使って納付記録を統合する作業に失敗

 2007年7月5日、当時の政府と与党(自民党・公明党)は「年金業務刷新に関する政府・与党連絡協議会」において、国民に社会保障カードを交付することに合意した

 「今後、年金の記録を適正かつ効率的に管理するとともに、常にその都度国民が容易にご自身の記録を確認でき、年金の支給漏れにつながらないようにするため」に導入する

②もう一つの背景 「社会保障制度の見直し論」

 日本が国際競争に打ち勝つためには構造改革が必要。その一環として社会保障制度の見直しを

 国内高コスト構造の是正 → 企業の社会保障負担の軽減、規制緩和

 新事業・新産業の育成 → 社会保障の市場化・営利化

 持続可能で安心できる社会保障制度の再構築を図る

 高齢化により社会保障費(年金・医療・介護等の費用)は増大し、少子化により負担は限界

 そこで、社会保障費の抑制をはかる

  「自助と自律」が基本、民間で実現可能なものは民間で

  → 公的責任の放棄、社会保障制度の市場化・営利化

③経済財政諮問会議での議論と方針化

 「骨太の方針2001」 ←小泉内閣

 ITの活用により、わかりやすくて信頼される社会保障制度を実現する

 社会保障番号制度の導入 ←社会保障制度運営コストの削減などが目的

 社会保障個人会計の構築

 個人レベルで社会保障の負担(保険料)と給付額とのバランスを国民自らに確認させ、国民の自立を促す仕組み

 「骨太の方針2006」 ←小泉内閣

 社会保障費を2007年度からの5年間、毎年2200億円ずつ削減する →政権交代の要因に

 「骨太の方針2009」 ←麻生内閣

 社会保障番号・社会保障カードは2011年度中を目途に導入する

(5)社会保障番号・カード構想のその後

 2009年8月の総選挙で、自民党・公明党による連立政権は敗北、民主党を中心とする新政権が誕生

 政権交代により、自公政権が進めてきた社会保障番号、社会保障カードの構想は、すべてストップ

 ただし、社会保障制度の見直しとともに、番号制度や番号カードに対する基本的な考え方は民主党による新政権へと継承され、現在準備が進められているマイナンバー(社会保障・税番号)制度へとつながっていった

6.マイナンバー法成立までの経緯

(1)自公政権による番号制度導入の検討

 2001年頃から経済財政諮問会議等での社会保障番号、社会保障カードの導入を検討

 また、納税者番号についても1970年代末から長年にわたって検討を進めていた

(2)民主党政権による法案提出

①民主党がマニフェストで番号制度の導入を約束

 2009年8月の総選挙にあたっての民主党マニフェスト

 厳しい財政状況の中で国民生活の安定、社会の活力維持を実現するためには、真に支援の必要な人を政府が的確に把握し、その人に合った必要な支援を適時・適切に提供すると同時に、不要あるいは過度な社会保障の給付を回避することが求められている。 ・・・税と社会保障の一体改革

 このために不可欠となる、納税と社会保障給付に共通の番号を導入する。

 総選挙で民主党が勝利し、民主党政権(鳩山内閣)が成立

②法案提出までの経緯

 新政権は、マニフェストの具体化を図るため、新たに設置された「社会保障・税に関わる番号制度に関する検討会(2010/2~6)」や、「政府・与党社会保障改革検討本部(2010/10~、2011/2政府・与党社会保障改革本部に改称)」、さらに同本部の下に設けられた「社会保障・税に関わる番号制度に関する実務検討会(2010/11~)」などで議論を進めた

 2011年1月 「社会保障・税に関わる番号制度についての基本方針」 導入へ向けた基本方針

 2011年4月 「社会保障・税番号要綱」 基本的な考え方、制度設計、実施計画案

 2011年6月 「社会保障・税番号大綱」 法案策定に向けた方向性を示す

 2012年2月には、共通番号制度の根拠法として「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」(マイナンバー法案)を閣議決定し、国会に提案した

 これまで「社会保障・税に関わる共通番号」などとよばれてきたが、公募により名称を「マイナンバー」と決定(2011年6月、番号制度創設推進本部)

 これらとは別に税制調査会でも番号制度の導入へ向けた議論が行われてきた  ←正確な所得の把握

 2009年12月 「平成22年度税制改正大綱」 社会保障・税共通の番号制度導入を盛り込む

(3)衆院解散による民主党法案の廃案

 民主党が提案したマイナンバー法案は、成立に向け民主・自民・公明の三党で修正合意がなされた

 しかし、衆院解散(2012年11月16日 野田内閣)に伴って、マイナンバー法案は国会で可決される前に廃案になってしまった

 その後の総選挙では、民主党は敗れ、新たに自民・公明による新政権(安倍内閣)が発足した

(4)自・公政権による法案再提出と成立

 自公による新政権は、旧法案に修正を加えた上で、2013年3月1日「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」(番号法案)を新たに国会に提案

 「通知カードの送付による個人番号の通知」などを追加

 2013年5月9日に衆議院で、5月24日に参議院で可決され法律として成立

 充分審議されたのか、国民に周知されたのか(特に自公政権による修正内容)といった問題が残った

(5)導入へ向けたスケジュール

2015年10月 国民等へ付番し通知(法律施行)

2016年1月 番号の利用開始、個人番号カードの交付開始

2017年1月 マイ・ポータル(2015/4 マイナポータルに改称)の利用開始

2018年(法律施行後3年)をめどに、民間利用など利用拡大に向けた検討を行う

2015年5月26日 (火)

マイナンバー制度って何? 何が問題なの? ―大阪・松原での講演レジュメ

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  2015年5月24日に「みんなが主人公 松原市民の会」が主催した学習会で、黒田充が行った講演のレジュメです。

1 はじめに

根拠法は番号法(2013年5月の国会で自・公・民・み・維などの賛成多数で成立)

今年の10月からマイナンバー(個人番号)を通知、企業等には法人番号を

 10月5日に12桁の番号を付番  生涯不変、変更は市町村長が認めた場合のみ

 対象は、住民登録(住民票)のある全ての国民・特別永住者、中・長期在留外国人

 番号の記載された通知カードを市町村から簡易書留(1世帯に1通)で交付

来年1月から番号の利用を開始

 国の行政機関、市町村、日本年金機構、健康保険組合等の持っている個人情報にマイナンバーを紐付け(リンク)し、マイナンバーで名寄せ(データマッチング)する

 始まりはゆっくり、全てが一度にではない

2 あなたはマイナンバーを使いますか

税 ― 源泉徴収票、年末調整、確定申告税務署等に提出する書類への記載

社会保障 ― 年金、医療、介護、生活保護、児童手当などの手続の際に、番号を告知

番号を書かない、言わないとどうなる?  雇用や社会保障、住民サービスからの排除も

3 個人番号カードは何のため

個人番号カード  写真付きICカード、来年1月から市町村が希望者に交付

申請用紙は通知カードともに送られてくる

国民には、個人番号を告げる義務、証明する義務

事業者には、従業員等の個人番号を聞く義務、安全に保管する義務

個人番号カードの市町村による独自利用や民間利用も可能

市町村:地域通貨、図書館カードなど  民間:本人確認(身分証明)

将来的には、健康保険証の代わりにも

自民党(5/20) 2016年3月末に1000万枚、2019年3月末に8700万枚の普及を目指す

個人番号カードの矛盾

個人番号が他人に知られないように ⇔ 個人番号が書かれたカードを日常的に利用

4 番号制度は何のため

政府は「役所にある住民情報をより正確かつ効率的に活用できるようになる」というけれど

利用分野は、税、社会保障、災害対策など

本当の目的は

①社会保障費の削減  「真に手を差し伸べるべき人」を選ぶ

出発点は小泉政権での社会保障番号の検討

所得や資産による給付制限

例えば

 生活保護での資産や親族の調査に活用、社会保障の給付額に上限

 さらには、原因(メタボなど)による医療給付に制限

②徴税強化  狙われているのは高所得者ではなく低所得者

扶養家族の所得、給与所得者の副業、子どものアルバイト

資産(預貯金、不動産)の把握

ただし、海外資産、海外取引の把握は困難

一方で金持ちへの優遇 ・・・ 金融商品(株、信託)への投資に損益通算の拡大

③そして、治安・テロ対策  戦争の出来る国

危惧されるのは「徴兵」ではなく、「徴用」またの名を「適材適所」

④IT公共事業としての側面も  マイナンバー特需は3兆円とも!

では、その「金」はどこから?

マイナンバーシステムの海外輸出も?

⑤経済界からは「民間も利用したい」の声  プロファイリングを活用したビジネス

「カモ」は誰か、危ないのは誰か

利用範囲は確実に広がっていく

現在、国会で審議中の番号法改正案では、預貯金の口座、特定健診、予防接種の履歴などに利用範囲を拡大

戸籍や医療情報(レセプト、カルテ)との紐付けも検討

「法律にはそこまで書いていない」「政府はそんな説明していない」では『甘すぎる』

推進者の想定を超えて広がっていく可能性が大きい

政界・官僚・財界の思惑はバラバラ、「こんな便利なものは使わないと損」

想像力をたくましくすることが必要

5 では、どうする?

「個人情報が漏れたら困る、恐い」の話だけではダメ

「政府・財界の目的は何か」を踏まえた批判が必要

このままでは日本の社会が激変する可能性  ・・・憲法違反(基本的人権の侵害)

取りあえず延期、そして中止・廃止への全国的な運動が必要不可欠

多くの国民は知らない、準備が整いそうにない

本当の狙いや、問題点を知らせる

市町村ではどうなっているのかを調べる ← 市町村抜きでは制度は機能しない

補足(1) 「先進国には番号制度がある」のウソ

先進7ヶ国の中には、マイナンバーのような制度を採用している国は、まだない

イギリス:国民の反対で共通番号は挫折

ドイツ:税務に限定、フランス:社会保障に限定

アメリカ、カナダ:社会保障番号が様々な官民の分野で利用ただし取得は任意

イタリア:生涯不変ではない

補足(2) 番号が届かない人たち

通知が届かない ― 住民票の住所と実際に住んでいる場所が違う人たち

番号が付番されない ― 戸籍はあるが住民票のない人たち 50~100万人?

2015年5月19日 (火)

マイナンバー  待ち受ける私たちの未来 (1)

 この小説風読み物は2011年1月に私が遊び半分で書いたものです。どこにも発表せず私蔵していました。ちょっとした気まぐれで公開することにしました。

 マイナンバーを共通番号、個人番号カードを国民IDカードと表記するなど若干、現在の状況と合わないところがありますが、その点を踏まえた上で、気軽に読んでいただき笑っていただければ幸いです。

 なお、この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。

  ※ もし時間が許せば、今後、バージョンアップしていく予定です。 Ver.1.0

 

目次

 (1)共通番号制度が始まって数年後の201X年――A市の市役所にて

 (2)引き続き――A市の市役所 PCコーナにて

 (3)A市の市役所前のビルの2階 NMC

 (4)引き続き――A市の市役所前のビルの2階 NMC

 (5)A市内にある親切岳度医院の受付窓口

 (6)引き続き――A市内にある親切岳度医院の受付窓口

 

(1)共通番号制度が始まって数年後の201X年――A市の市役所にて

 市民相談窓口の表示を――《痛みをわかちあい、自助・自立の日本をつくろう、みんなに迷惑をかけないようにしよう》の横幕の下に――見つけた市民1478****578「あの~、すみません(市役所って混んでいると思ってたのに、えらくすいてるね)」

「いらっしゃいませ、こんにちは。わたくしは本日お客さまの担当をさせていただきます窓口受男と申します。本日はどのようなご用件でしょうか」と、ニッコリ応対する窓口受男こと8793****253

1478****578「生活保護の申請をしたいのですが」

8793****253「お客さま、生活保護というサービスは現在ありません。国民ID制度を利用した給付付き税額控除に変わっております」と、採用後の研修で読んだマニュアルを頭の中に浮かべながら、満面の笑み

1478****578「えっ、そうなんですか。じゃ、その給付は、いつ頃、いくらぐらいもらえるんですか」

8793****253「お客さま、国民IDカードは、いまお持ちでしょうか」と、ますますニッコリ

1478****578「もちろん持ってます。持たずに出歩くと、不審者扱いされますから」と、8793****253に差し出す

8793****253「いえいえ、お渡し願わなくて結構です」と、あわてて拒否しながらもニッコリ

1478****578「調べてくれるんじゃないのですか」と、こちらはびっくり

8793****253「当窓口では、お客さまに代わって調べることも、お客さまの国民IDカードを預かることもできません。国民IDカードを使えば、ご自宅のパソコンで調べられます。もし、操作がわからない場合はコールセンターにお電話ください」と再びマニュアルを思い出しつつ、もう一度満面の笑み

1478****578「家のパソコンは、ウイルスにやられて使えないんです」

8793****253「そうですか。では、当市役所のPCコーナーでも調べられますので、そちらでお調べください」とニッコリ

1478****578「パソコンコーナーへ行けということですか」と、ややお怒りモード

8793****253「いえ、パブリックコンピューターコーナー、略してPCコーナー。日本語でいうと公共電子端末角です」と、なぜか誇らしげにニッコリ

1478****578「どっちでもいいですけど。どうして調べてくれないの」と、さらにお怒りモード

8793****253「どうしてって~いわれても(マニュアルに書いてあったかな・・・)」と困惑

1478****578「あんた市の職員なんでしょ、調べてよ」と、本気でお怒り

8793****253「えっ、違いますよ。職員のはずないでしょ。職員はビルの一番上の階にいる人だけですよ(顔まだ見たことないけど)。俺は、ただの派遣社員ですよ。ほらっ」と胸ポケットのロゴ「MMS」を指さす

1478****578「ふ~ん(MMSってなに?)」

8793****253「代わりに調べること何んてできませんよ。やっと先月採用されたのに、そんなことしたらクビになっちゃいますよ」と、こちらもお怒りモードでベラベラと

1478****578「そうなんで・す・か……。わたしも派遣だったんですけど、クビになっちゃって。3ヵ月前に離婚して、子どももまだ小さいし、仕事にはありつけないし、それで生活保護を……」とガックリ

8793****253「うぁ~、たいへんですね。実は、俺の姉も、別れるとか何とか言って、おととい子ども連れて帰ってきて、それも2人・・・」と言いかけて、窓口の上の監視カメラを思い出し「(あっ、余計なこと言っちゃった。録画されているだろうな。クビになったらどうしょう~、せっかく入った青年奉仕団の会費払えなくなっちゃうよ) とにかく、あ、あちらにありますPCコーナーで、お調べください」とぎごちなくニッコリ

1478****578「あっちね(すいてるの当たり前だ、全然役に立たないもん)」

 

 (2)引き続き――A市の市役所 PCコーナにて  →

マイナンバー  待ち受ける私たちの未来 (2)

 この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。

目次

 (1)共通番号制度が始まって数年後の201X年――A市の市役所にて

 (2)引き続き――A市の市役所 PCコーナにて

 (3)A市の市役所前のビルの2階 NMC

 (4)引き続き――A市の市役所前のビルの2階 NMC

 (5)A市内にある親切岳度医院の受付窓口

 (6)引き続き――A市内にある親切岳度医院の受付窓口

 

 (2)引き続き――A市の市役所 PCコーナにて

「いらっしゃいませ、こんにちは。わたくしは本日お客さまの担当をさせていただきます満面絵美子と申します。本日はどのようなご用件でしょうか」と、ニッコリ応対する満面絵美子こと7015****647

「あの~、わたしの給付付き税額控除がどうなっているのか調べたいんですけど。あちらの窓口で、こちらでわかると聞いたのですが(へぇーこっちもすいてるね、わたしだけか)」と1478****578

7015****647「お客さま、国民IDカードは、いまお持ちでしょうか」と、ますますニッコリ

1478****578「(まただ……)はいはい、もちろん持ってますよ(この頃、どこへ行っても、まずカード出せなんだよね、名前聞く前に)」と、7015****647に差し出す

7015****647「いえいえ、お渡し願わなくて結構です」と、あわてて拒否しながらもニッコリ

1478****578「えっ、調べてくれるんじゃないのですか」と、こちらはびっくり

7015****647「当PCコーナでは、お客さまに代わって調べることも、お客さまの国民IDカードを預かることもできません。国民IDカードを使えば、ご自宅のパソコンで調べられます。もし、操作がわからない場合はコールセンター0120-XXX-XXXにお電話ください」と、もう一度満面の笑み

1478****578「なに言ってんの。家のパソコンが使えないから、こちらに来たんですよ」と語気荒く

7015****647「了解いたしました。では、こちらの公共電子端末、略してPC、で調べられますので、どうぞお掛けになって、ご自由にお調べください」とニッコリ

1478****578「(公共何ちゃらって、もったいつけてるけど、これパソコンじゃない。あっ、ここも画面に《痛みをわかちあい、自助・自立の日本をつくろう、みんなに迷惑をかけないようにしよう》って字が流れてる、わたしは、もう散々痛い目にあってますよーって) あのー、使い方わからないんですけど……」と椅子に座りながら

7015****647「なお、ご利用料金は、お一人様、1日、1回につき15分まで無料となっております。万一超過された場合は、5分毎に200円のご利用料金のお支払いが必要となりますので、あらかじめご了承ください。また、最初に公共電子端末の画面に表示されます注意事項と免責事項は必ずお読みください」と早口でマニュアル通りに

1478****578「(えっ、無視かよ) それより使い方は?」

7015****647「では、今から15分とさせていただきます」と言って、計時スイッチをON

1478****578「(また無視かよ) だから、どうやって使うの、これ」とあきらめモード

7015****647「あっ、ハイ? 使い方ですね、お客さまの国民IDカードを公共電子端末横の国民IDカードスロットにご挿入ください。パスワード入力画面が表示されますので、お客さまのパスワードをご入力ください」

1478****578「そこまでなら、わたしだったわかりますよ。あんたに言われなくてももうやってるし~」

7015****647「(あっ、ほんとだ) では、後は画面の指示に従って、ご自由にお調べください。もしご不明な点などございましたら、コールセンター0120-XXX-XXXにお電話ください。もし必要でしたらマニュアルもご用意しておりますので、ご遠慮なくお申し付けください」

1478****578「(電話しろって、何?)あなたが教えてくれるんじゃないの?」

7015****647「たいへん申し訳ありませんが、お客さまの個人情報保護をお守りする必要がございますので、わたしどもは、お客さまがお調べになられることについて、お客様のプライバシーをお守りするためにお答えすることはできません」

1478****578「お客様の個人情報って何それ、わたしは使い方聞いてるだけ。プライバシーも何も関係ないでしょ。第一、あんた公務員でしょ」

7015****647「いえ、お客さま、わたしどもは、市役所様より、この業務を承っております委託業者の日本全国市役所PC案内丸儲けサービス株式会社でございます」と胸ポケットのロゴ「PMS」を指さす

1478****578「じゃ、あんたも派遣社員か、窓口の人といっしょだね」

7015****647「あっあの人ですか、あの人はMMSの派遣さんです、(会社は同じグルーブらしいけど、話したこともないし。ちょっとカッコイイけど……)、わたしは、ただのアルバイト(それも、最賃ぎりぎりのね)」

1478****578「そっか、でも、使い方わからないし、画面の字、読んでも何のことかわからないし……」

7015****647「そうだね、困るよね。じゃあね、市役所の前のコンビニのあるビル、あの2階に、何でも親切代行丸儲けサービスセンターってとこ、NMCって書いてあるから、そこへ行ってみて。民間だから、お金は取られるけど、安いし親切だよ」とくだけた調子で

1478****578「へぇ~、じゃそうする。ありがと」と席を立つ

7015****647「あっ、それからサービスセンターに行ったら、満面絵美子に紹介されたって言ってみて。きっと親切にしてくれるから、ま・ん・め・ん、ねっ(……っと、これで今日は紹介7人目、ノルマ達成まであと13人、時間給10円上がるから、がんばろっーと)……本日はご利用ありがとうございました。またのご利用をお待ち申し上げております(どうでもいいけどPMSとNMCって、経営者同じなんだよね、福岡に無茶苦茶高いビル建てたらしいし、ほんと丸儲けだ、アルバイトのわたしには全然関係ないけどね)」と見送りながら

1478****578(最初からコンビニの2階へいきゃよかった、時間損した。預けたままの私の未来大丈夫かな)

 

 (3)A市の市役所前のビルの2階 NMC  →

マイナンバー  待ち受ける私たちの未来 (3)

 この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。

目次

 (1)共通番号制度が始まって数年後の201X年――A市の市役所にて

 (2)引き続き――A市の市役所 PCコーナにて

 (3)A市の市役所前のビルの2階 NMC

 (4)引き続き――A市の市役所前のビルの2階 NMC

 (5)A市内にある親切岳度医院の受付窓口

 (6)引き続き――A市内にある親切岳度医院の受付窓口

 

(3)A市の市役所前のビルの2階 NMC

(あっ、こっちは混んでる、年寄りでいっぱい、ちょっと待たないとダメかな)とやって来た1478****578、国民IDカードを入口横の《順番待ちの登録ができますので、国民IDカードをお通しください》とかかれた機械に通す。(あっ、このBGM、何とかフォーティシックスっていう、弟の好きなアイドルグループの歌、『痛みをわかちあい、自助・自立の日本をつくろう、みんなに迷惑をかけないようにしよう』っていう。そういや、あいつからBBTに入ったってメール来てたけど、あいかわらず家でブラブラしてんのかなぁ)

・・・・・・30分後・・・・・・・

「1478****578のお客様、お待たせいたしました。どうぞこちらへ。はい、いらっしゃいませ、こんにちは。わたくしは本日お客さまの担当をさせていただきますNMC、何でも親切代行丸儲けサービスセンターの代行刷留夫と申します、本日はどのようなご用件でしょうか」と、ニッコリ応対する代行刷留夫こと3120****748

1478****578「あの~、ちょっと調べていただきたいことがあるんですけど。市役所のPCコーナーの人、たしか満月さんたったかな、聞いてきたんですが」

3120****748「あっ、満月じゃなくて、満面ですね(おお、絵美ちゃん、がんばってるな、それにしても満月って、確かに顔はまん丸だけどね、今度、BBTのカラオケパーティーにでも誘おうかな……)、わかりました。こちらに来られるのは今日が始めてですね。会員カードもお持ちじゃないと。では、簡単にシステムのご説明をさせていただきます。私どものサービスは、お客さまに代わって、電子私書箱を利用して、お客さまの個人情報の検索や、インターネットによる電子申請などを行うものです。もちろん、お客さまの指示にしたがってですが。料金の方は時間制でして、最初の30分までが税込みで1000円で、そのあとは10分ごとに税込みで300円となっております。クレジットカードもご利用いただけます。以上、よろしいでしょうか」

1478****578「ああ、使い方を教えてくれんじゃなくて、代わりにやってくれるんですか」

3120****748「電子私書箱を開いて、取りあえず見るのは簡単なんです、お年を召した方でも誰でもできます。でもですね、その後の手続きがわからない。読んでも言葉がわからないし、制度がどうなっているんだかもわからない、あっちこっちクリックして、しなくていい手続きをやっちゃう何てことも多いんですよ。この間もテレビでやってましたよ、年金の金額確認してて間違って辞退届出したおばあちゃんだとか、何かの給付の申請だと思ってクリックしたら消費者金融で、いらないお金借りちゃった人とか(俺の実家でも一騒ぎあったよな)、こういうシステムって結局、時間とお金、余裕のある人ね、そういう人には便利なんでしょうけどね。月額利用料5万円なんていう電子私書箱もあって、いちいちオペレーターが画面に出て来てマンツーマンでいろいろやってくれるところもあるようですよ(会員になるには職業とか、会社での地位とか、資産とか、うるさい事前審査もあるけどね、俺なんか死ぬまで無理だ)」

1478****578「そうね、わたしのは無料だもんね。前に自分のを開いてみたことあるの、でもCMの動画がいっぱい流れるし、何が何だかさっぱり。でも30分1000円って結構高いですね(派遣やってた時の時給より高いやん)」

3120****748「いえ、わたしどもの料金は、業界ではもっともリーズナブルな設定となっております。もし、わたしどもNMCの会員なっていただければ、全国にあるわたしどものサービスセンターのご利用料金10%割引きとさせていただきます(みんな、コンビニとセットのフランチャイズだけどね、俺もここがすいたら下いってレジ打ちだ)。会費は無料です。ただ、当社と当社のグループ企業、当社が認めた企業からの広告メールをお受け取りいただくことが条件となっております(バンバン来ますよ、アダルトとか出会い系もね)。コンビニ、コーヒーショップ、レンタルショップなどでも使えるポイントカードも付いてきます。マイルが貯まるクレジットカード付きカードもございます。どういたしましょう?」

1478****578「(迷惑メール送りつけるってか、今どき流行らないよ、そんなの) 取りあえず会員は結構です」

3120****748「(チェッ残念、ノルマ稼ごうと思ってたのに)では、お客さま、国民IDカードは、いまお持ちでしょうか」

1478****578「(また同じセリフ……)はいはい、もちろん持ってますよ。でも、あなたに渡しちゃダメなんでしょ」

3120****748「いえいえ、こちらは代行サービスですので、国民IDカードをお預かりしないと何もできませんので。どうぞどうぞ、ディスプレイの前にお座りください」

1478****578「へぇ~そうなんだ。キーボードもマウスも付いてないね、このパソコン」

3120****748「ディスプレイだけです。以前はキーボードもマウスも付いていたんですが、お年寄りがね、かってに触っちゃうんですよ、画面にいろいろ出るから気になるんでしょうね」

1478****578「(はぁ~、そういうもんか)じゃ、これね」と座りながら、国民IDカードを差し出す

3120****748、受け取った国民IDカードを自分の前のパソコンのスロットに挿入しながら「いま画面に、お客さまと私どもとの契約書、それからお客さまの個人情報のお取扱いについてのご了解事項が表示されております。もし、お読みいただいて問題ないようでしたら」といってテンキーボードを差し出す

3120****748「こちらのテンキーボードに国民IDカードのパスワードを入力してください」

1478****578「(あっ、これね、クレジットカードの暗証番号押すやつね) へえ~っ、これ全部読むの、読んでたら30分終わっちゃいますよね」

3120****748「まあ形式ですから、どうぞパスワードを、間違わないようにしてくださいね(全部読んでるやつなんか見たことないよ、俺も読んでないし)」

1478****578「ふ~ん、そういうもんだよね」と言いながらパスワードを入力

3120****748の前のパソコンと、1478****578の前のディスプレイに同じ画面が表示される

3120****748「ハイ、お客さまの電子私書箱が表示されましたご確認ください(おっ、またまたヨッホッホーの無料電子私書箱だ。儲けてるね、株式会社ヨッホッホー、検索サイトに、ネットショップ、オークションに、携帯電話と)。えっ~と、199X年X月X日生まれの困田奈々子様、共通番号は1478****578となっておりますが間違いないですね(カードの顔写真も、画面の顔写真も、目の前のあんたと一致っと、共通番号も1478****578で一致っと)。ご住所はっと……あっ、こちらへ引っ越されたばかりですね。で、今日は、何をお調べですか(ちきしょう。広告がうざいな)」

1478****578「わたしの給付付き何とかがどうなっているのか知りたいんですけど、わかります?」

3120****748「はい、給付付き税額控除ですね。簡単ですよ。1478****578様、収入は株式会社こきつかい派遣サービスからの給料だけで、毎月12万円程度ですね。で、これは解雇されてると。ん~と、給付付き税額控除は……あっ画面に「次へ」が出ましたね。給付出そうですね。2001***578様の配偶者、あっ元配偶者様ですね、この方のご扶養家族の扱いになったまま・・・いや、これは昨年のデータですね。今年はもう外れていますね。金額はと、……あっ子どもさんがいらっしゃいますね、お1人、共通番号5247****002様、お嬢様ですね、201X年X月X日生まれ、3歳っと。親権は1478****578様がお持ちだと。じゃ大丈夫です、今、無職・無収入ですから、このままだと結構出ますよ」と、マウスをクリック。

3120****748「あれっ、月2万円か(まあ出るだけ良いよな、俺なんか「給付付き」って言ったって税金取られる方だからな。控除もちょっとだし)」

1478****578「えっ、2万円だけですか。家賃も払えないじゃないですか(あんな汚いワンルームなのに5万もするんだよ)」

3120****748「う~ん。おかしいですね。ああ預金ですよ。丸儲け銀行の貧困町支店に口座お持ちでしょ(なんだ、うちの系列バンクか)。そこにまだ20万円ありますね。だから減額されたんですよ」

1478****578「そんなことまでわかるんですか。でもそれ娘のために学費を貯めているんですよ」

3120****748「預金は預金ですからね。それからこれずっとこの金額が出るわけではありませんので。歳入庁のコンピューターが、お客様の求職活動とかの状況を見て金額を自動的に変更しますし、給付対象としてふさわしくないと判断されれば止まりますから。もちろん給与が良い仕事に就かれてもすぐに止まります」

1478****578「へぇ~そういうもんなんだ(ふさわしくないってどういうことだろ)。まあ、2万円でもないよりましね。手続きはどうするの」

3120****748「ここをクリックするだけです。あとは自動的に1478****578様名義の銀行口座に振り込んでくれますので。あれ、警告が出た。ああ、親族照会ね。おそらく親族に収入と資産のある方がいますね」

1478****578「親族?」

3120****748「今、調査中・・・。あっ出ました。3012****954と2170****026に収入と資産ありか。お客様の親御さんですね。これでは無理ですね」

1478****578「どういうこと」

3120****748「法律で、まず親族に頼るということになってまして、親族の方との所得や資産を合算して、それでも給付が必要だと判断した場合にのみ支払われるのです」

1478****578「じゃダメっていうこと」

3120****748「親御さんに御相談されてみてからですね」

1478****578「(そんなこと言われても、どうしよう・・・)あっ、そうだ子ども手当ってありましたよね、あれは?」

3120****748「ご存じないのですか。生活保護も子ども手当もみんなもうありませんよ。給付付き税額控除が始まってから、消費税25%にあげたけど、結局、国のお金が足らないとか何とか言って、どんどんなくなっていってね。今は、この給付だけ。年金だって給付付き税額控除があるから、もういらないだろうって話ですよ(おっと言い過ぎた。後で怒られるな)。もちろん政府は「真に手を差し伸べるべき者」にはきちんとしてくれますから、まあ心配はいりません。」

1478****578「そうでしたよね、失業手当ってのも昔はあったらしいですね。年金の必要ない社会を実現しますって、大泉首相がテレビでそんなこと言ってましたよね。心配しなくて良いのかな。でも、パソコンでわたしのこと何でもわかっちゃうんですね、離婚のことも、娘のことも」

3120****748「パソコンでわかるんじゃなくて、共通番号をもとにいろんなデータベース、コンピューターですね、これを検索するんですよ、いろんな役所や企業から、銀行とかクレジット会社だとか、いろんなところから集めてくる、個人情報をね、バァーっと。共通番号は知ってますよね、国民IDカードの表に印刷してある番号。あれが肝心なんです。あれがなけりゃこんなことできません」

 

 (4)引き続き――A市の市役所前のビルの2階 NMC  →

マイナンバー  待ち受ける私たちの未来 (4)

 この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。

目次

 (1)共通番号制度が始まって数年後の201X年――A市の市役所にて

 (2)引き続き――A市の市役所 PCコーナにて

 (3)A市の市役所前のビルの2階 NMC

 (4)引き続き――A市の市役所前のビルの2階 NMC

 (5)A市内にある親切岳度医院の受付窓口

 (6)引き続き――A市内にある親切岳度医院の受付窓口

 

(4)引き続き――A市の市役所前のビルの2階 NMC

1478****578「よくわからないけど、何か恐いですよね」

3120****748「いやご心配はいりません。先ほどご同意いただいた契約書通り、わたしどもは、知り得たお客さまに関する個人情報は、お客さまの不利益になるような形での利用は一切いたしません(あとで文句言われないように、キータッチも、画面も、この会話も全部記録されていますよ。で、会社の方で客の利益だと判断すれば、勝手にどんどん利用しちゃうけどね)。もし、わたしどものサービスをご利用していただいたことから、何かお困りのことが生じましたら、私どもも加入しております代行手続きサービスの業界団体の相談窓口もございますので、そちらをご利用ください(団体の会長は、業界最大手の我が社NMCの社長だから、暖簾に腕押し、糠に釘ですけどね)」

3120****748「ところで1478****578様、『こども園』はどうされます。もし、ご希望でしたら申込みができますが」

1478****578「えっ、そうなんですか。これから求職活動しないとダメだから、助かる~」

3120****748「もちろん、『こども園利用券』の申込みですよ。『こども園利用券』が届いてから、お客さまが希望する『こども園』に自分でお申込みをしていただく必要があります」

1478****578「そうですよね。券が届いてから自分で探すんですよね。離婚前に子どもを預けていた時もそう。あの頃は、2人でいっしょにあっちこっち歩いて探したな。なかなか空きがなくてたいへんだったけど」と遠い目

3120****748「大丈夫です、この電子私書箱で申込みできますよ。券といってもメールで送られてくるだけですから。もちろん、わたしどもがお申込みを代行することも可能ですし、我がNMCの系列会社、子どもなんか知るか丸儲け園が経営している『こども園』も、市内にありますし(思いっきりすし詰めだけどね、給食はコンビニ弁当だし、保育士は園長除いてみんな無資格のアルバイトだけどね)」

1478****578「じゃ、とりあえず利用券お願いします。園の方への申込みは券が届いてから考えます。で、申し込むには何が必要でしたっけ」

3120****748「いまは、何もいりません。こうやってクリックするだけ、あとは厚生労働省のコンピューターが、要件を判定して、券が出せるかどうかですよね、でOKだったらメールで送られてきますから。あっ、これはちょっと」

1478****578「どうしたんですか」

3120****748「5247****002様、娘さんがですね、慢性疾患をお持ちで、先々月も入院されていますね。通院もされてる。株式会社・格差会混合診療病院ですか、これ前の住所の近所ですね。今のお住まいからだと、ちょっと遠いですね。健康保険の利用額も多いと。派遣会社の健保から国保に替わってらっしゃる。これは当たり前ですけど。(あっ、国保の保険料、初っぱなからいきなり滞納だ。そりゃこれだけ健康保険使ったら保険料高くなるわ。まあ、それでもクレジットカードで払うようにすりゃとりあえず払ったことになるのに……って、クレジットカード全部、別れた亭主の家族カードじゃん、こりゃ引き落としでけんわ)」と言葉に詰まりながら。続けて、

3120****748「ご存知だと思いますが、この疾患の場合、条件付き利用券になりますね。受け入れてくれる『こども園』が限られますから。子どもなんか知るか丸儲け園の『こども園』は絶対に無理ですね(そんな手間のかかる子の世話をしていたら儲かりません。もし、万が一、子どもに死なれたら裁判がたいへんですから、お金も時間もかかるし。まあ、どうせ裁判では勝つのですけどねって、この前、NMCの経営研修に来た講師の園長が言ってたな)。で、どうします」

1478****578「お願いします。でも条件付きって……、入れないと仕事できないし、どこに相談すれば……」

3120****748「相談ですか。ん~市役所に行ってもねぇ~、保育が市役所の仕事だったのは昔の話ですからね。『痛みをわかちあい、自助・自立の日本をつくろう、みんなに迷惑をかけないようにしよう』ってことですから(小学校の今日の目標みたいだって言うやつもいるけど、俺は支持してるよ、なんたって俺BBTのNMC職域第256支部の支部長代理補佐心得その三だからね。俺たちの兄貴、ビックブラザーこと大泉順次郎首相が、俺たちのこと考えて提案してくれた救国のスローガンだからね、まあ選挙には一度も行ったことないけど)」と、エンドレスで『痛みをわかちあい~』の歌を流し続ける天井に埋め込まれたスピーカーを指さしつつ

3120****748「子育ては自己責任、自助努力、こども園は民間の事業だって言われるだけだろうし。いっそのこと厚生労働省にメールでも送りますか。どうしてくれるんだってね、まあ返事は来ないでしょうけど(いや、ひょっとするとビックブラザーからメールが来たりして、いまこそ痛みをわかちあおうって。ハイル大泉なんちゃって)」思わず右手を斜め前に伸ばしそうになった3120****748

1478****578(お母さん、パチンコとか連れってってないだろうな。未来大丈夫かな)

3120****748「じゃ、とにかく5247****002様の分、申し込んどきますよ」と、マウスをカチャカチャと

1478****578「あっ、はい、すいません。でも、すごいですね、娘の病気のことまでわかっちゃうんですね」

3120****748「共通番号から健康保険の種類や利用状況、診療記録、投薬記録、それから生命保険、医療保険の加入状況、ドナー登録の有無、全部わかるようになっています。最初は、自分で自分の情報を確認して、健康管理に活用するという話だったんですが、いまは、いろいろと使われていますよ。生命保険に入るときも、引き受けの判断だとか、健康保険料の計算なんかにも使われていますよ。病気がちの人は高くしないと損だというわけですよ。ほら保険料は走った分だけって自動車保険のCM昔あったでしょ。あれと同じですよ。なんで不健康な人と同じ保険料なんだってね。まあ最近じゃ、メタボだって、高くなるって話ですしね」と、前に突きだしぎみの腹を左手でさすりながら、「まあ、病歴の提供は本人同意のうえですが(同意しなけりゃ生命保険の加入も、健康保険も使えないし、診療もしてもらえないんだから、同意も何もあったもんじゃないんだけど)」

1478****578「大泉さんが言っている、みんなに迷惑かけている人はだれだ、探してやっつけろってやつね(BBTってよくわからないけど、大泉さんは、政治家にしては若いし、いい声だし、ハンサムだし、独身だしね。別れたバカ亭主の何万倍もカッコイイな)」

3120****748「いやビックブラザーは、やっつけろってまでは言ってませんよ。あの人は優しいんだから。ただ共通番号使って探そうってね、みんなに、そう呼びかけているだけ。BBTの中には過激な人もいますがね(俺の支部にも、障害者施設に殴り込みをしようなんて言うやつもいますがね)。で、もう他にありませんか。まだ最初の30分、少し残ってますよ」
と、突然、ディスプレイの画面にヨッホッホーのキャラクターが登場し「見てね、見てね」とコールを連発し踊り狂う。

1478****578「何なんですか、これ。まさかウイルス」

3120****748「これ、鬱陶しいですよね。ただのCMですよ。クリックするまで消えない、はい、コチットね」とクリック

1478****578「あっ、かわりに何か開いた」

3120****748「お客様、これ年金積立保険のCMメールですよ。ヨッホッホーの関連会社のヨッホッホー支払い渋りますよ生命保険からの。お客様の年金、これまでの毎月の保険料では、70歳になって年金支給が始まっても、生活が満足にできませんよって。お金足りませんよって。それに、これからの保険料の負担見込みと、給付見込みを比べると、お客様は差し引き500万円ほど損をしますよってなってますね」

1478****578「へぇーっ、そんなこともわかるんだ(わたしの500万円誰が持っていくんだろ)、でも、どうすればいいの」

3120****748「ヨッホッホー支払い渋りますよ生命保険株式会社の年金積立型医療生命保険に加入すれば、万事解決とありますね。毎月5,000円払えばですけどね。もうひとつありますね。ヨッホッホー手数料で丸儲け証券株式会社からのメールですね。こちらも年金不足の解決は株式投資でってありますよ」

1478****578「ヨッホッホーって、かしこいようでバカですね。わたし失業中なのに」

3120****748「大丈夫です。お金のない人は、ヨッホッホー骨までしゃぶる消費者金融株式会社から融資を受けられますよっていうメールもあります」

1478****578「お金貸すって、担保にするようなもの何も持っていませんよ」

3120****748「いや~、お客さん自身が知らない何かを、ヨッホッホーが見つけ出したのかも知れませんよ、世界中のコンピューターを検索してね、何か価値あるものをお持ちじゃないんですか…へっへっへっ」と目で1478****578の身体を下から上へ、上から下へと

1478****578「何それ、恐い」

3120****748「じょ、じょ、冗談です。わたしには妻も子もいますから。それに臓器売買って話もありますから(ネットの掲示板に載ってたやつを思い出して)、もちろんジョークです、ジョークね。あっ、そうだ。仕事探しているんですよね」

1478****578「ええ、探してます」

3120****748「じゃ、こんなバカメールほっといて、仕事探しサービスも申し込んどきますか。条件言ってください」

1478****578「そんなこともできるんですか」

3120****748「お客さまが利用されているヨッホッホーの電子私書箱には、おまけとして仕事探しサービスが付いています。とは言っても、単に系列会社のヨッホッホーピンハネJOBにリンク貼ってあるだけですが。やっぱりご希望は派遣ですか」

1478****578「そうですね。正社員なんて今さら無理ですよね」

3120****748「何か資格持ってます?」

1478****578「ホームヘルパーの2級なら」

3120****748「そうですか、でも介護職って、いま外国人ばかりですよね。日本人はまず採用ありませんよ。規制撤廃で、どっと外国から入って来ましたからね。看護師も外国人増えてますよね。日本語大丈夫なのかなと、わたしなんか心配しますけどね。で、他に希望とか条件とかありますか?」

ヨッホッホーにこれ以上、わたしの個人情報知らせて大丈夫なのかなぁと思いつつ、背に腹は替えられないと、3120****748に希望と条件をあれこれ告げていく1478****578。

3120****748「はい、今日は、お疲れさまでした。おっと、ちょっと時間オーバーですね、まあ今日は初回なのでサービスしておきます。1,000円で結構です。また何かありましたら、お気軽にお越しください(きっとまた来るな、このタイプの人は、自分でできないから)」とニッコリ笑い、国民IDカードを疲れ切った様子の1478****578に返す。

500円硬貨2枚を重ねて差し出し、軽く頭をさげて出て行く1478****578。そこへ携帯電話の着信音。1478****578の母2170****026からだ。先週末から、娘を見てもらうために家に泊まってもらっている。

2170****026「ミーちゃん、熱出しちゃったの、いつものやつみたい。すぐに帰ってこれる」

1478****578「用事終わったから、すぐ帰る。でも格差会混合診療病院は遠いから、とりあえず、駅前の診療所、えーっと親切岳度医院だっけ、そこに連れて行くから、お願い、もうちょっと見てて」

 

 (5)A市内にある親切岳度医院の受付窓口  →

マイナンバー  待ち受ける私たちの未来 (5)

 この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。

目次

 (1)共通番号制度が始まって数年後の201X年――A市の市役所にて

 (2)引き続き――A市の市役所 PCコーナにて

 (3)A市の市役所前のビルの2階 NMC

 (4)引き続き――A市の市役所前のビルの2階 NMC

 (5)A市内にある親切岳度医院の受付窓口

 (6)引き続き――A市内にある親切岳度医院の受付窓口

 

 (5)A市内にある親切岳度医院の受付窓口

「いらっしゃいませ、こんにちは。わたくしは受付を担当させていただいております親切岳度医院の診療駄目子と申します。今日は、どうされましたか」と、ニッコリ応対する診療駄目子こと0197****085

1478****578「あの~、この子なんですけど、熱出したんです。こちらの診療所は、今日初めてです。慢性疾患なんで、ずっと格差会混合診療病院で診てもらってるんですけど、遠いものですから。こちらで診ていただけます?(もっと混んでると思ったのに、結構、すいているな)」

2170****026は、孫をおんぶして横に立っている

0197****085「ご心配いりません。診療カルテは電子化されていますので、日本中、どこの病院でも診療所でもネットで患者様のカルテをお取り寄せすることができます。格差会混合診療病院様からも、もちろんお取り寄せできます。検査記録も投薬記録もすべて大丈夫ですし、必要があればDNA情報も(本人だけでなくて家族のも引っ張り出せるんですよ、最近は。遺伝が関係してないかとか調べるためにね)」

2170****026「よかったね、ミーちゃん、いつもの先生じゃないけど、診てくれるって。良くなったら、ハンバーガー食べに行こうね。でもミーちゃんのお母さんは、フライドチキンの方が好きかな。おばあちゃんは、最近、牛丼にはまってるけどね、だって、おじいちゃんと2人で行って、ワンコインだからね」

0197****085「では、国民IDカードをお願いします。えっ~と、お嬢様は、まだお持ちじゃないでしょうか。もしまだでしたら、お母様の国民IDカードで結構ですので、お願いします」

1478****578「生まれたらすぐにでももらえるらしいけど、市役所に請求したら。でも、この子はまだ」と2170****026に

2170****026「そうね、いろいろあったからね」

1478****578「ううん、そういうのじゃないの。赤ん坊なのにIDカードって変よねって、2人で話してたから(あの頃は、まだ会話があったな)」と、遠い目をしながら、国民IDカードを0197****085に

0197****085「ありがとうございます。では、被保険者資格を確認させていただきます」と言って、受け取った国民IDカードを目の前のパソコンのスロットに挿入する

と、少し困った顔をしながら0197****085「申し訳ございませんが、共通番号1478****578の困田奈々子様の国民健康保険の被保険者資格は停止されています。このカードでは、共通番号52・・・様、あっお嬢様ですね、自費診療扱いとなりますが、それでもよろしいでしょうか(今日は、これで何人目かな)」

2170****026「えっ、あんた、健康保険入ってないの。会社やめたら国保に入らないと。ミーちゃん、からだ丈夫じゃないんだし、市役所で手続きしないの」とビックリ

1478****578「ううん、いまは手続きはいらないらしいよ。共通番号があるから、クビになったら、放っといても全部自動的に国保になるんだって、派遣会社の人が言ってた。そうじゃないんだ。お金がなくって、保険料、ぜんぜん払ってないの。だから……」

2170****026「えっ、あの人からもらってないの。あんたが親権とったからって、養育義務は、あの人にもあるのよ、お金ふんだくってくりゃいいんだよ。あんな男(って、それでもミーちゃんのお父さんなんだけどね)」

1478****578「もう、あの人とは話したくないのよ(疲れたの)。それに言ったってお金くれるわけないし、きっと家でゲームしてるか、ゴロゴロしてるだけ。あいつもクビになったの(それが別れる切っ掛けになったんだけどね)、わたしと同じ。みんな失業中。お父さんだってリストラにあったんでしょう」

2170****026「何言ってるの、リストラされたけど、いま、お父さん、ちゃんと仕事してるよ、ビルの警備員だけどね。毎晩、わたしの作った弁当持って出かけるの、朝までがんばってんの。わたしもポスティング始めたとこだったのよ、あれ結構おもしろいの、運動になるしね。犬にワンワン吠えられたりするけど。年金もらえるようになるまでは元気でいないとね。配るのにせっかく馴れてきたのにね、こっちへ来なけりゃならなくなっちゃってね。ほんとミーちゃんのお母さんは困ったちゃんですね」

1478****578「ふ~ん、そうなんだ(犬にワンワンか、猫ならニャンニャンだ)。それよりどうしよう」

0197****085「国保料の滞納ですか。よくあるんですよ。まったくお金ありませんか? 少しでも何とかなりませんか、すぐに国保のコールセンターに電話して、いま、これだけ支払うから、残りはいつまでに支払うからって言ってみてください。そうしたら、国保のデータセンターのデータを短期保険証に書き換えてくれますから(でも、最近は、この交渉がうまくいかない人が多いですけどね)」

・・・・・・・・・・・・・

コンピューターの声「はい、こちらKTSO、国民健康保険とりたてサービス機構のコールセンターです。ただいまおつなぎしますので、このままで、もうしばらく待ちください」
1478****578(あっ、ここも、さっきと同じフォーティシックスの歌が流れてる。『Yeah、Yeah~ みんなに迷惑をかけないようにしようよ Wow、Wow~』って何よ、変な歌詞)

・・・・・・・・・・・・・

9962****345「お待たせいたしました、KTSO、国民健康保険とりたてサービス機構のコールセンター、担当の電話田受子でございます。ご用件をどうぞ」と電話田受子こと9962****345がはきはきと

1478****578「滞納している国保料、少しだけですが払いますので、保険証使えるようにしてもらえませんか」

9962****345「お支払いですね。携帯電話からの発信ですね(携帯だと確実に相手が特定できるからね、手間が省けていいよっと)。では、最初に、国民IDカードに印字されている共通番号をお知らせください」

1478****578「1478****578です」

9962****345「共通番号は1478****578ですね。では、本人確認いたしますので、パスワードを携帯電話からご入力ください」

1478****578が、パスワードを入力

9962****345「はい、ありがとうございます。確認いたしました。困田奈々子様ですね。お客さまの本日までの滞納額は延滞金含めて131,481円です。このため、現在、被保険者資格は停止となっております。本日は、おいくらお支払い願えるのでしょうか。クレジットカード払いか、コンビニ払いが選択できます。もちろん、お客様が先ほどご利用されましたNMC、何でも親切代行丸儲けサービスセンターでもお支払いは可能です。KTSO、国民健康保険とりたてサービス機構といたしましては、全額お支払いをお願いしたいのですが」

1478****578「(わっ、さっき行ったサービスセンターのことまで知ってるんだ、すごい) 一度にそんな払えません。失業中なんです。いま、診療所に来ているんです。子どもが熱を出して。保険証使えなかったら全額自己負担だっていうし、困ってるんです。いくら払ったら使えるようになります?」

9962****345「申し訳ありません。お客さまが失業により国民健康保険に移られたこと、また現在も失業中であることは、こちらでも共通番号を使って確認しております。また、離婚後、お客さまが親権者となられたお嬢様が、慢性疾患であることも充分把握しております(相手に事情を言わせる前に、こっちから先にそんなこと知ってるよと……これがマニュアルにあった先手必勝の極意です、ん~わたしカッコイイ)。しかし、規則で、そういったお客様個人の問題は自立・自助、自己責任の原則から、一切考慮できないことになっております。ただ、どうしてもお客様の極々個人的な問題でお支払いが困難である場合は、滞納額の半分程度お支払い願い、残りについても具体的な支払い計画を示していただければ、短期被保険者証の扱いをさせていただくことができます。いかがでしょうか」

1478****578「(本当に何でも知ってんだね、わたしのこと。みんな筒抜けだよね)半分って、えっ~と65,000円か、えっ!そんなお金ありませんよ。でも3万円くらいなら何とかなります。あとは今月中には何とかします(3万円くらいなら、おばあちゃん出してくれるよね、あとは全然当てないけどね、何とかなるくらいなら苦労しないし)」

9962****345「申し訳ありません。それでは、資格証明書の扱いとなります。この場合、医療機関の窓口で一旦全額お支払い願いまして、後日、KTSO、国民健康保険とりたてサービス機構よりお客さまに国民健康保険適用額を還付いたします。ただし、還付の時点でまだ滞納がございます場合は、滞納額と還付金とを差し引きさせていただきます」

1478****578「(それじゃ、意味ないじゃん)困ります。なんとかなりませんか」

9962****345「いま、こちらで共通番号を利用して、お客さまについて、いろいろと調べさせていただいたのですが、お客さまはクレジットカードをお持ちではありませんし、銀行や消費者金融などからもお金を借りていらっしゃらないようです。また、過去に借金の返済を滞ったとの記録もありません(1478****578は偉いね、学生の時の奨学金も利息つけて毎年ちゃんと返しているようだし)。そこで提案ですが、わたしどもKTSO、国民健康保険とりたてサービス機構の系列に、この度、金融庁のご承認をいただきまして、KTSK、国民健康保険とりたてサービス金貸し会社を設立いたしました。お客さまの場合、条件的に問題ありませんので、国保料滞納額の3分の2を限度に、ご融資が可能です。もちろんご融資したお金は、全額滞納の支払いにあてさせていただきます。また、滞納の残額については、2ヵ月以内にお支払いいただけることをお約束いただければ、2ヶ月間利用可能な短期被保険者証の扱いをさせていただくことができます。なお、利息は、年7.3%です。お申し込みいただければ、直ちにご融資できますが」

1478****578「こどものことだから……お願いします(勤め先さえ見つかったら何とかなるよね、少しずつなら返せるかも)」

2170****026「わたしが出せればいいんだけどね。わたしもお金ないし。帰りの新幹線代もいるし」と横で聞き耳立てながら

9962****345「ありがとうございます。ただ、連帯保証人が必要です。いま、お客様のお母様、共通番号2170****026様がお隣にいらっしゃいますよね。お電話を替わっていただけないでしょうか」

 

(6)引き続き――A市内にある親切岳度医院の受付窓口 →

マイナンバー  待ち受ける私たちの未来 (6)

 この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。

目次

 (1)共通番号制度が始まって数年後の201X年――A市の市役所にて

 (2)引き続き――A市の市役所 PCコーナにて

 (3)A市の市役所前のビルの2階 NMC

 (4)引き続き――A市の市役所前のビルの2階 NMC

 (5)A市内にある親切岳度医院の受付窓口

 (6)引き続き――A市内にある親切岳度医院の受付窓口

 

 

 (6)引き続き――A市内にある親切岳度医院の受付窓口

12170****026「どういうこと、何でわたしが横にいることわかるの。どっかにカメラでもあるの」と、娘1478****578から携帯電話をひったくり、キョロキョロ

9962****345「個人情報をデータマッチングする方法は、お客様の個人情報を守るため企業秘密とさせていただいております(2170****026さん、あんたの娘の携帯番号からあんたの携帯番号もわかるの。家族全員の電話番号を登録すると100万円が当たるかもってキャンペーン、年がら年中、丸儲け&ヨッホッホー合弁カンパニーがやっているやつ、あれ登録したでしょオバチャン。100万円に目がくらんで。って、わたしも亭主と子どもの番号かってに登録したけど。それにこの2人、携帯のGPS機能ONにしてるし、ピンポイントで2人の携帯の位置判明、隣同士仲良く並んでますよってわけ)。こちらで調べましたところ、お母様が現在お住まいの住宅の家屋、土地の2分の1が共通番号2170****026様であるお母様名義になっております。あと半分は、2170****026様の配偶者6698***204様の名義だと。住宅ローンの担保にはなっていますが、残額が少額ですので、これで共通番号2170****026様にご返済資力があると判断されました。お母様に連帯保証人になっていただくことが可能です。いかがしましょうか」

2170****026「だから、何でそんなことまで知ってるの(ローン組んだ頃は、2人とも正社員だったからね、半分半分にしたんだよね、あの頃はよかったなぁ、奈々子もまだ小さくてかわいかったし。こんなに大きくなって、かってに家飛び出して、結婚して、子どもまでつくって、あげくに別れて。まあかわいいミーちゃんいるから許したるけどな)」

9962****345「個人情報をデータマッチングする方法は、お客様の個人情報を守るため企業秘密とさせていただいております(携帯番号わかれば住所わかるし、料金の引き落としから銀行わかるし、そこで住宅ローン借りてるでしょ。とりたてサービス機構のバックは、あんたがローン借りてる銀行なのよ。全部お見通し。ローン借りたとき、銀行側が客の利益になると判断した場合は客の個人情報を使っていいって書いてあったのに同意したでしょ。細かい字だけど、ちゃんと読んどけよ、2170****026のオバちゃん)。どうされますか」

2170****026「わかったよ。かわいい孫のことだから、お金借りるよ。それで保険証使えるんだよね、困ってんだから、早くしてよ」

9962****345「では、念のため、おばあさまの共通番号をお知らせください。国民IDカードはお持ちですよね」

2170****026「ああ、もちろん持ってますよ。見せてっていわれた見せられない人とか、持ち歩いていないって人は、みんな怪しい人なんだから。でもね、こないだ、うちのバカ息子が持たずに夜中にコンビニ行って、お巡りさんに怒られたけどね、バカだよほんとに、BBT、あっビックブラザー友の会ね、あそこの青年奉仕団の腕章がポケットに入っていたからよかったけど。青年奉仕団は、わたしがうるさく言って入らせたのよ。ちょっとはシャキッとするかとね。ほんとに警察にひっぱられるとこだよ。まあ、世の中、物騒なんだから、みんなに持たせるのは賛成だよね。外国人だってどんどん増えてるし、防犯カメラだってどんどん増やせばいいんだよ。うちの自治会でも今度いっぱいカメラつけたんだから、みんなでお金出し合って、警察といっしょにね。悪いことしない私なんかにゃあった方がいいんだよ、ほんとにカードもカメラも、青年奉仕団だってね。 あっ、ゴメン 共通番号だったね 2170****026 これでいいかな」

9962****345「共通番号2170****026ですね(よくしゃべるな、うちのおかあさんとおんなじ)。では、本人確認いたしますので、パスワードを携帯電話からご入力ください」

2170****026は、パスワードを入力し、電話を1478****578に返す

9962****345「はい、ありがとうございます。確認いたしました。共通番号2170****026様ですね。では、ただいま金額87,654円のご融資を実行させていただきましたので、共通番号1478****578様の国民IDカードを2ヶ月間利用可能な短期被保険者証の扱いとさせていただきました(やったー、これで今日の貸し付けノルマ2件達成、金額は少額だけどね、その場で下手に支払われるより、お金借りてもらう方が、こっちの評価あがるしね、やったやった)」

9962****345「それから、ご注意申し上げますが、共通番号1478****578様の健康保険利用額が、お嬢様の5247****002様の分も含めてですが、たいへん高額となっております。国保だけでなく、以前のお勤めの会社の健保も含めてですが。このままのペースで健康保険を利用されますと、数年以内に、将来の年金支給額の減額措置をとらせていただくことになると思いますので、ご承知おきください」

1478****578「えっ、何それ。意味がわかんないんですけど」

9962****345「いえ、むずかしいことではございません。このままでは、健康保険の負担額よりも給付額の方が大きくなりますので、超過分について、将来の年金の支給額を減らさせていただくだけです。負担と給付のバランスをとる措置です。これをやらないと国民の間に不公平が生じますから。わたしは健康で、健康保険使ったことないので損だなどといった、苦情が来ますので。特に医療費が高額になる慢性疾患、それも子どもさんの場合は、へたすりゃ一生ですからね。ずっと医療費がかかるは、病気で働けないから保険料の負担はできないではね。うちの子なんか、みんなピンピンしてて医者いらずだから、損な部類ですよね。まあ他人様に迷惑かけてないからいいんですけどね。あっ、すみません、お客さまのお嬢様が迷惑かけてるなんて言ってるんじゃないですよ。『痛みをわかちあい、自助・自立の日本をつくろう、みんなに迷惑をかけないようにしよう』ってことですから。気を悪くしないでくださいね(あ~あ、このイヤミも仕事のうちなんだから、ほんと、いやになっちゃう。恨まないでね。言わないとわたしの評価下がっちゃうから。会話は全部録音されてるんだから)」

1478****578「はぁ……そうですか」と意気消沈

9962****345「それから、ご融資のご返済に関するお知らせですが、数時間以内に困田奈々子様の携帯電話宛にメールをさせていただきますので、ご確認ください。なお返済は本日より1ヵ月以内にお願いいたします。1ヵ月を過ぎますと利息は14.6%になりますのでご注意ください。本日はありがとうございました」

1478****578「えっ、ちょっと待ってよ、7.3て言ったじゃん、14.6なんて聞いてないよ、1ヵ月以内なんて無理、ちょっと……、あっ電話切れちゃった」

・・・・・・・・・・・・・

疲れ切った2人とお熱の1人、再び診療所の受付窓口へ

「いらっしゃいませ、こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか。わたくしは受付を担当させていただいております親切岳度医院の診療駄目子と申します」と、ニッコリ応対する診療駄目子こと0197****085

1478****578「えーっと、さっきも来たんですけど」と、不満顔の1478****578

0197****085「ああ、そうでしたね。忙しくて、どの人もこの人も、保険証がどうのこうのって、本当にみなさんたいへん」と苦笑い

1478****578「お金払って、短期何ちゃらにしてもらいました。健康保険使えると思うんですが」と国民IDカードを差し出す。

0197****085は、受け取った国民IDカードを目の前のパソコンのスロットに挿入する

0197****085「短期被保険者証ですね。はい、大丈夫です。2ヶ月間限定の短期被保険者証だと確認できました(金さえもらえれば、瞬時に書き換えるんだよね、とりたて機構の連中。っていっても仕事だしね、あの人たちも。悪いのは制度だよね、いや制度を作った政治家か、いやいや政治家を選んだのは国民だよね、じゃ悪いのは国民か? えっ、わたし……)。えっ~と、お嬢ちゃんのカルテも診察までには全部準備できますからご安心ください。ところで、失礼ですけど、お金どうされたのですか」と心配顔で

2170****026「お金借りたんですよ。電話の相手が貸してくれるっていうから。わたしが連帯保証人になってね」

0197****085「そうですか。借りられてよかったですね。他に借金があったり、返済してなかったりで、借りられない人も多いんですよ(でも借りると今度は金利がたいへんだけどね……)。最近は、健康保険が使えないからあきらめて帰っちゃう人も多いんですよ(患者さんが減ってたいへんだって、うちの院長のおくさんも困ってますよ、本当に、いつまで開けていられるかってね)。じゃ、国民IDカード返しますね。順番が来たらお名前、お呼びしますからそちらでお待ちください。それからこれ体温計ね。ピッと鳴るまでね」

1478****578「あの~、あそこに貼ってあるポスターなんですけど」

0197****085「あっあれね、なんとかフォーティシックスの《みんなに迷惑をかけるやつは誰だって》書いてあるポスターね、BBTのお医者さんの会ていうのがありましてね。そこが貼ってくれってうるさいの。うちの院長は、あまり好きじゃないんだけど。ああっ、フォーティシックスじゃなくて、BBTの方ね。わたしもね」

2170****026「へぇー、わたしは好きですよ、どっちもね。ねえ~ミーちゃん、あんたも好きだよね、迷惑かけるやつはやっつけろってカッコイイもんね。ミーちゃんも大きくなったら、フォーティシックスか、BBTの少女団に入ろうね」

1478****578「あの迷惑かけるやつって誰のことなんでしょうね」

2170****026「何いってんの、そりゃ大泉さんも言ってるように、悪いやつに決まってるんじゃない。働かずに家でブラブラしている若い人とか、なおる病気でもないのに医者にばっかりかかっている人とか、フリーターとかいってアルバイトしかせずに給付付き何たらでたくさんお金もらっている人とか。そんな人は、何たら番号でみんな調べ上げればいいんですよ」

0197****085「でもね、ひと様に何にも迷惑かけずに生きていける人なんていないでしょ。みんないろいろ抱えて暮らしてるんだし、いつ病気になるか、事故にあうか、失業するか、わからないですしね。1人では解決できないから、お互い様で、みんなで助け合ってがんばろうって、その方がわたしは、人間らしくていいと思いますよ。ねぇ、未来ちゃん」

未来ちゃん「あっ、ピッて鳴ったよ」

2015年5月 6日 (水)

大阪都構想に対する私の意見―大阪市を特別区に分割することが情報処理システムに与える問題点について(未定稿)

 大阪都構想に反対する学者の人たちの記者会見に刺激されて、私の意見―大阪市を特別区に分割することが情報処理システムに与える問題点について―を書いてみました。
 まだ不十分な内容ですので、今後更新して予定です。

大阪都構想に対する私の意見―大阪市を特別区に分割することが情報処理システムに与える問題点について(未定稿)  2015/5/7版

■住民情報系7システムは一部事務組合に丸投げ

 大阪市を分割し特別区にするならば、それに伴い大阪市民の個人情報に関わる処理システムを5つの特別区別に分割する必要があります。

 しかし、協定書はシステム管理については、住民情報系7システム(住民基本台帳等システム、戸籍情報システム、税務事務システム、総合福祉システム、国民健康保険等システム、介護保険システム、統合基盤・ネットワークシステム)等は、「専門性の確保、サービスの実施に係る公平性及び効率性の確保を図るため」に、一部事務組合を設けて共同処理するとしています。わかりやすく言えば、情報処理は、専門性が必要であり、分けることは困難、また高コストになる、だから事務組合を作って一括処理するということです。

 では市民はこれで納得するでしょうか。住民票や戸籍、税、福祉、健保、介護などの個人情報は、市民一人ひとりにとって外部へ漏れると困るたいへん大事なものです。市民サービスを受けるために市を信頼し市役所に預けたものです。市民は、特別区に分割されれば、当然、区役所に個人情報は移ると思っているでしょう。しかし、新たに作られる一部事務組合に市役所から丸投げされるのです。

■共同処理とはどういうことなのか

 国のIT政策や総務省などの指導もあり、複数の市町村がコスト削減などを目的に、個人情報などの処理システムを共同化する動きがあります。既に都道府県単位などで共同化しているところもあります。

 しかし、この共同化は、データセンターなどの共同化です。建物は同じでも、また使っているソフトウェアや、プログラムの基本的な部分が同じであっても、各自治体の個人情報は別々のデータベースに治められ、通信回線を介して各自治体の職員が操作し、必要な処理が日々行われています。

 ところが協定書に書かれた一部事務組合での共同処理は、こうした共同化とは意味合いが違うのではないかと思われます。建物や、使っているソフトウェア、プログラムだけでなくデータベース自体も同じということになるのではないでしょうか。現在のデータベースには、一人ひとりの市民について、どこの区民であるかの印(いわゆるフラッグ)が付けられている―例えば、此花区春日出に住むAさんには「此花区民」の印が―と思います。これが特別区に分割されると「湾岸区民」の印に変わるだけ。こうすれば比較的簡単に対応でき、協定書にある「効率的」が果たされることになります。

 では、市民にとってはどうでしょう。市民は特別区の設置により区民になったと思っている、ところがデータベース上では、あいかわらず一つのまま、ただ元の市民一人ひとりが今はどこの区民であるかの印が付けられているだけ。騙しのようなものです。

 協定書にある「公平性の確保」とは、どこの区民になってもデータベース上では同じ扱いという意味なのでしょう。

■住民の名簿を自ら管理しない特別区は自治体と言えるのか

 もっとも、データベースの問題、コンピュータの話なのだからとやかく言うほどのものでもないとの声もあるかも知れません。

 しかし、考えてみてください。自治体は、区域と住民と政府(役所)が揃ってこそ自治体です。どれかが欠けていれば自治体とは言えません。また、ここで言う「住民」は、「誰かわからないが、とりあえず何人か区域内に住んでいるようだ」ではダメです。具体的に誰が住民であるのか、そしてその住民がどのような人なのかを知っている必要、要するに詳しい名簿を役所が持っている必要があります。

 こうした名簿は昔は紙で作られ管理されていましたが、今はコンピュータが使われています。大阪市では住民情報系7システムがそれに当たります。大阪市を分割するのですから、名簿も5つに分け、それぞれの自治体が管理するのが当然です。ところが、これを分けずに一部事務組合が一括管理する、これでは特別区は一人前の自治体とは言えません。

■一部事務組合任せでは、区独自の改善・変更は困難に

 またシステムを共同処理することから、区独自の判断によるシステムの改善―サービスの向上や事務の効率化などを目的とした―などが、非常にやりづらくなるのではないかと思われます。同じデータベースで処理していれば、ちょっとした変更でも全て5区で協議し合意しなければならなくなります。帳票や画面表示のごく簡単な変更でも簡単にはできない、そんなことになってしまえば、職員の仕事は柔軟性を欠き非効率になり、サービスを受ける住民にもしわ寄せとなるでしょう。

 そもそも特別区の設置は、区に独自性をもたらすためのものとされているのですから、区によってサービスに差異が出て来るでしょう。出て来なければ分割した意味はありません。

 コンピュータによる情報処理は住民サービスの内容に応じて構築されるものです。ですから、当然ですが住民サービスの変更に伴って改変する必要が生じます。共同処理を未来永劫続けるなら、それは特別区の設置の意義と矛盾することになります。いつかは独自に処理する必要が出て来るでしょう。その時にはあらためて多額の初期投資が必要となります。各区の財政状況は同じではありません。裕福な区は、比較的容易に一部事務組合から離脱し独自のシステムを構築することができるでしょう。しかし、そうではない区はどうなるでしょう。詰まるところ、お金のない区だけが、自由度のないシステムを共同で使い続ける一部事務組合に残るということになります。

 なお、大阪市のままであれば、当たり前ですが、こうした分割のための経費は必要ありません。

■特別区へ対応するための移行期間は確保されるのか

 特別区に移行するのは2017年4月1日です。その日にはシステムの移行も行われます。果たして混乱なく移行できるのでしょうか。現在の区役所は、新しい特別区の区役所(本庁)になるもの、支所になるものに分かれます。また手狭なため一時的にしろ別のビルを借りるところもあるでしょう。どちらにしても、現在の区役所が持つ機能は変わります。それに伴って各区役所のシステムの変更も必要です。

 ここには大きな問題が立ちふさがっています。移行期間です。3月31日の夜に、備品を移し、看板を書き換えただけでは、翌日から特別区としての仕事を始めることは出来ません。システム変更には必ず移行期間が必要です。もし、市役所、区役所を数週間(最低でも数日)程度閉めることができるのなら、システムのテストをやり、不具合を直すこともでき、比較的簡単に移行を終えることも可能かも知れません。

 しかし、一晩で変更となればどのような事態になるのか想像すらできません。朝になっても住民票の写しが発行できないとか、システムがダウンしたままで、職員のパソコンの画面が真っ暗といった事態もあり得ます。

■新しい住所への移行は間に合うのか

 また、システムの移行には、画面表示や帳票等への印字を新しい住所に変更することも含まれます。新しい住所がいつまでに決まるのかはまだわかりません。万が一、住民との間でもめるようなことがあって、特別区発足直前にまでずれ込むようなことになればどうなるでしょう。システムの変更が間に合わない、そんなこともあり得るでしょう。

 区役所から区民への通知、例えば納税通知などが旧住所のまま送られるとか、住所変換にミスが生じて大量の返戻や、遅配、誤配が出るかも知れません。

 政令市を特別区に分割した経験など誰もありません。住民情報の処理システムを合併などに伴って統合した例はいくつもありますが、分割をした例などありません。システムが様々なトラブルや不具合に見舞われることは、もはや間違いないでしょう。もちろんトラブルの中には、混乱による誤操作等を原因とした個人情報の流出も、残念ながら想定せざるを得ません。

■マイナンバーとの並行作業は可能か?

 マイナンバーの関係で言えば、2016年の稼働に向けて、おそらくシステムに関わる現場は、既にてんてこ舞いの状態でしょう。そこに投票の結果次第では、5月末から2017年4月に向けた準備が加わるのです。あまりの忙しさに、職員の中から何人もの病人が出てもおかしくない状態になると思います。

 マイナンバーの個人番号通知は、今年の10月ですから現在の大阪市のシステムで行うことになります。2016年1月から始まる希望する市民への個人番号カード(写真付ICカード)の交付や、税・社会保障関係での番号利用も、現在のシステムで行うことになります。
 ところがマイポータルや、自治体間のシステム連携は2017年開始の予定です。ちょうど特別区がスタートするときです。当然、大阪市も、その後に出来る特別区もその対応が必要です。何らの問題もなくスムーズに行くとはとても思えません。

 なお、大阪市として発行した個人番号カードは、特別区に変わる時点で表面に記された住所を変更する必要があります。おそらく数十万枚発行済みでしょう。どう対処するのでしょうか。

■システム移行は後回しになる可能性

 ところで、特別区に向けた準備にしろ、マイナンバーに向けた準備にしろ、これらは情報システムを管理している部署だけでは出来ません。住民票や戸籍、税、福祉、健保、介護など、いわゆる現課との綿密な協議や打ち合わせが必要です。帳票一枚、画面一つ作るにしろ、勝手にできるわけではありません。

 果たして、現課の職員が、システム担当者とのこうした協議や打ち合わせに充分な時間を割けるのでしょうか。現課の職員が、目に見えるものへの対応に追われれば、直接見ることなどなく、スイッチを入れれば動いて当然と思っているシステムへの対応など後回しにされるのではないでしょうか。しかし、特別区への移行という締め切りは、絶対に延ばすわけにはいきません。

 そのしわ寄せは市役所、区役所の職員に及ぶだけではありません。システム管理には多くの民間企業の社員―何次にも渡る下請けや、非正規や派遣労働者等々も含め―が関わっています。そうした人の中にも過労などによる病人が必ず出て来るでしょう。そして最終的には特別区の区民にも、サービスの低下や、権利侵害など様々な弊害が訪れることになるでしょう。

■個人情報の処理は自治体が責任を持つべき

 最初にも述べたように、住民の個人情報は、絶対に漏えいさせてはいけません。また情報の毀損や消失もしてはなりません。万が一、漏れたり、誤ったり、なくなったりすれば、住民に取り返しの付かない損害を与える可能性があります。

 ですから、個人情報を含む情報の処理は、当該自治体が責任を持って行うべきものです。それを分割の困難性や高コストなどを理由に、具体的な議論や検討なく安易に事務組合に預けてしまうような行為は、住民に対して責任を持つ自治体として、あまりにも無責任と言わざるを得ません。

 今回の大阪市で行われようとしている大阪市を廃止して、特別区にする案は、住民情報の処理の面から見ても、以上のようにたいへんな深刻な問題をはらんでいます。同時に、情報処理システムの移行に多大なコストをかけたところで、それは住民サービスの改善には全く繋がりません。むしろ流出などが生じる危険性を増すだけです。

 わたしは、以上の点から大阪市の廃止、特別区への移行は中止すべきだと考えます。

マイナンバーとはいかなるシステムか (4) ―排除のシステム

4 排除のシステム

 もう一つは排除のシステムです。
 個人を特定して一生追跡する。ストーカーのようなことをするのにマイナンバーは役立つのですが、これは排除と表裏の関係です。一番わかりやすいのは、番号を持っているか持っていないか。要するに住民登録、住民票があるかどうかです。住民登録がなければ、マイナンバーの個人番号は付番されません。外国人も含めてですね。住民登録があるか否かです。
 ホームレスの人たち、最近はネットカフェ難民の人たちもですが、こうした人の多くは住民票を既に消されてしまっています。そういう人には番号通知が来ないどころか、番号そのものが付けられません。マイナンバーが付かないことで、まずもって非常に深刻な排除が起きます。あと6カ月で確実に起きます。

 それから住民登録があって、番号が付番されているにもかかわらず、通知が届かない人もかなりの数になるでしょう。住民票に書いてある住所と実際に住んでいる場所が違うとマイナンバーの通知が届かない。DVとか色んな事情で逃げて来た、住民票を置いたままにして来た、そうなると通知は届きません。
 女優の上戸彩さんがテレビでCMしている「住民票を確認しておこう」というのはそういうことです。住所地に住民票を移動させなさいという案内です。しかし、すんなり移動させられるぐらいだったらいいのですが、移動させたらDV男が見つけて、追いかけてくる可能性がありますね。ヤクザが追いかけてくるかもしれない。だから移動できないわけです。移動できないとマイナンバーの通知は届きません。

 「別に番号がなかってもええやないか」と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、残念ながらそうはなりません。雇ってもらうときに番号を言わなければならな事態が、来年にはもう始まるのです。2016年1月以降に新しく就職しようと思うと、番号を言わないとだめなのです。雇う側も番号を聞かないとだめなのです。その番号が正しいものだということを、証明する義務や確認する義務があるわけですから、番号がない人、自分の番号を知らない人は雇用から排除されてしまう。こういうことが、もうすぐ始まろうとしています。

 さらに、民間企業でマイナンバーを使ったプロファイリングが行われるようになれば、生命保険や医療保険から排除される可能性もあります。
 先ほどの「マイナンバーを健診に使う」という話、今回の法律改正で広げようと政府は考えている話をしました。こうした健診の結果が、生命保険や医療保険のサービスにつながっていくのではないかと私は思うのです。生命保険会社が、契約の際に「あなたの健診結果をマイナンバーを使って見てもよろしいですか」と聞いてきます。「OKしていただければ、保険料が1割下がりますよ」と。そうすれば、みんなどんどん「いいですよ、いいですよ」とOKする。ところが会社から「あなたは加入できません」と言われてしまう人が出て来る、健診結果から見てこの人を加入させると損するなとの判断ですね。加入した途端に入院されたり、亡くなられたりしたら損ですからね。

 もちろん、こんなことが来年すぐに始まるなんてむちゃは言いません。しかし、将来的にはそういうことになるでしょう。健診結果だけでなく、遺伝子情報まで広がっていくかも知れません。無茶なと思うかも知れませんが、マイナンバーを民間利用したいというのは、そういうことなのですから。

← 3 分類・選別・等級化のシステム

マイナンバーとはいかなるシステムか (3) ―分類・選別・等級化のシステム

3 分類・選別・等級化のシステム

■彼・彼女は価値のある人間なのか?

 マイナンバーのもう一つの性格は、分類・選別・等級化です。プロファイリングして、「ああ、この人はこういう人やな」とわかって、それで終わりにはならないわけです。監視と何か、どういうことなのかの話です。

 誰かを見て「ああ、この人はこういう人やな」とわかっても、放ったらかしでは意味ないですよね。例えば包丁を持ってうろうろしている人を見かけて、「ああ、あの人、包丁を持ってうろうろしてるわ」ではダメですし、「人を刺したら大変やね」とシミュレーションしているだけではダメなわけです。取り押さえるなり警察に電話するなりしなければならない。
 監視は、見ることと次に行動を移すことが必ずセットになる。ですから、プロファイリングした次に出てくるのは分類・選別・等級化です。これは先ほど「真に手を差し伸べるべき者」という言葉、考え方を、社会保障費の削減という文脈の中から竹中・小泉コンビが考え出したと言いましたが、彼・彼女をプロファイリングすることで、価値のある人間なのかどうかを値踏みし、選別する、篩にかけるということをマイナンバーでこれからやっていこうというのです。

 具体的に考えられているのは、例えば社会保障や医療給付の制限、上限設定です。これは最近あまり言われなくなったのですが、「社会保障個人会計」という名前で、小泉さんの時代、盛んに言っていました。保険料と給付のバランスを個々人のレベルで取る、一生涯で使える社会保障の額に限度を設ける、そういう話です。一生涯ではなく、年間の限度額という考え方も出来ます。医療費、健保組合からの負担ですね、これをたくさん使ったら年金給付が減るとか、そういうことです。社会保障全体で給付額を見る。

 それからもう一つは、その人が一生涯で支払った保険料ともらった給付額を引き算して、もらったほうが結果的に多くなってしまった場合は遺産から取ろうという話。そういうシステムを「社会保障個人会計」と呼んでいました。これは私が妄想で言っているのではなくて、ちゃんと政府のホームページに検討していると書かれている。現在は、表に出てきていませんが、前の前の前ぐらいの政権、もう一つ前ぐらいかな、では盛んに検討がなされていました。社会保障費を削減したい考えは変わっていませんから、おそらくまた浮上してくるでしょう。

 それから、理由、原因による制限ですね。これはメタボの関係でちょっと話が出ていたりするのですが、健保組合から、メタボに関わる健診を受けろとか生活を改善しろとか書いたチラシとかパンフが送られてきたり、会社でそういった話が出たりすると思うのですが、あれをもっと極端にして個人レベルまで落として行って、メタボ対策をしていない人が将来、いわゆる生活習慣病ですね、昔の成人病、これになった場合は給付に制限をかけようというそういう考えです。

 よくテレビで、分野は違いますが、自動車の損害保険の宣伝をしていますね。走った分で保険料が決まるという。たくさん車を運転している人と少ししか使っていない人で保険料が一緒だったらおかしいから、走行距離に応じて保険料を決めましょうという話。あれと同じ考え方なのです。
 健康保険も、その人の使っている量に応じて金額を変えるかもしれないし、支給額や給付割合を変えていくかもしれないし、資産に応じて給付額、また保険料も変えていく、そんなことをやっていこうという考え方ですね。政府が好きな自己責任、自己負担の考え方です。

 これが先ほど話した小泉内閣が倒れる原因となった「国民全体で痛みを分かち合う」ではなく、特定の人たちを狙い撃ちにしていこうとそういうものですね。そのためには、一人ひとりをプロファイリングしなければいけないのです。その人がどういう人か調べるために、個人情報と繋がった番号、マイナンバーが要るのです。

■生活保護費の抑制に活躍?

 当面は、マイナンバーは、生活保護費の抑制で大活躍するだろうなと思います。生活保護申請をすると市町村は預金調査をするのですが、これからは本人の預金調査だけではおさまらないでしょう。銀行口座にマイナンバーが入りますし、それにマイナンバーは、誰と誰が同じ世帯かもわかるようなシステムとしてつくられようとしていますから、本人だけではなくて家族。家族というとお父さん、お母さんとか、そんな意味ではないですね。いわゆる三親等内の親族というやつです。
 長い間、音信不通の甥や姪が生活保護の申請をしたら、その甥や姪の預金調査だけでなく、自分の預金口座も勝手に調べられるというようなことが起きる可能性があります。もし預金がごっそりあったら、「甥や姪の面倒を見んかい、おまえ」というような話になる。もちろん今のところ法律的にそんな義務はありません。
 しかし、政府はマイナンバーの構築に多額の金を使っていますし、生活保護費の削減を進めているのですから、法律で義務化される可能性もあると思います。また義務化されなくても、申請した人に「あんたのおじさんを調べたら預金たくさん持っているね。まずそちらに相談してみたら」と、窓口で指導されるかも知れません。それだけでも生活保護の抑制になるでしょう。

 それから、これははっきりしていないのですが、固定資産税、不動産、土地や家屋にかかる税金―市町村がやっている、東京の場合は都ですが―についてもマイナンバーと紐付ける作業が、市町村で進められているようです。これは市町村で固定資産税の事務を行うために必要だということで行われているようですが、そうなってくると、三親等内の親族の誰かが生活保護の申請をやると、自分が持っている不動産についても調べられる可能性が出てくるのです。「あんたの親戚、えらいええマンションを都心に持っているやないか。そいつを頼りに行かんかい」という話になるわけですね。
 都心のマンションを持っている人に直接、「誰々の面倒を見ろ」と言われるのではなくて、むしろ最初に始まるのは申請をした本人に、「おまえのおじさんは都心にマンションを持っているじゃないか。そこへ住まわしてもらったらいい。その話をまずつけてこい。それで、おじさんがだめだと言ったらもう一遍来い」とかいう、そういう指導、いわゆる水際作戦がどんどん展開されていくだろうと思います。

 郷里から黙って出てきている人だとか、親戚とのつき合いが切れてしまった人、DVで逃げている人なんかは、そんなことはできませんから、申請を諦めてしまう。ですからマイナンバーが社会保障費の抑制という点で、最初に役に立つのは生活保護だろうと。これは早ければ数年のうちに、2017年とか18年頃には、こういった事態が新聞の紙面を賑わせているかも知れません。もっとも、そうなったとして、もうその頃にはマイナンバーでそうなるのは当然と国民は受けとめているかも知れませんね。

■国民等を適材適所に

 あともう一つ、日本の政治の行方との関係です。よく言われるのは「徴兵制に使われるのでは」です。可能性はあります。徴兵制が入る可能性はゼロではありません。しかし、徴兵制だけのためだったらこんな大層なシステムは要りません。住民票と戸籍があればできてしまう。
 戦前、戦中のコンピュータなどない時代でも極めて正確に徴兵制度を機能させていたわけでしょう。日本の官僚制度は極めて優秀なわけですから、こんなものがなかったって、やろうと思えば出来るわけです。

 では、一体徴兵制の絡みでどういうことがあるのかというと、現実的なのは徴兵ではなくて徴用だと思います。兵隊に行くのではなくて、国民が適材適所に配置される。適性にふさわしい活用を図るために使われる可能性です。別に軍隊について行って飯炊きせよとか、そういう話だけではないですよ。例えば、いま介護で人が足りなくなったりしているでしょう。そうすると、「あんたはそんな無理をしなくても、介護の職だったらつけますよ」というようなことを半ば強制的に指導をしていくような、そういう仕事につかざるを得ない―本人の希望とは別にですよ。希望している人はもちろんやったらいいわけですが―希望をしていない人も含めて、人々が賃金が安くて嫌がっている仕事なんかに事実上強制的に、外堀を埋めていくようなやり方で、それしかつけないようにしていくということも含めてやっていくだろう。そういうことにプロファイリングが生かされていくだろうなと思います。

■民間企業も分類・選別・等級化したい

 それから、先ほどから民間の話もしていますが、政府だけでなく、彼らも、国民、彼らから見ると消費者を分類・選別・等級化したいのです。昔からある「お得意さんには便宜を図る」を、さらにもっと組織的に正確にコンピュータを使ってやっていく。別な言い方をすると「カモ」をどうやって見つけるかですね。個々の消費者の傾向や特性をつかんで、その人に応じてセールスを実行していく。

 皆さん使っているかどうか知りませんが―私は行かないのですが―ハンバーガーのチェーン店のクーポンですね。携帯電話とかスマホで会員になるとクーポンが送られてくるらしいですけど、あのクーポンの中身というのは人によって違うらしいです。その人が、いつ、何を店で買っているかによって違うものを送っているようです。
 アマゾンなどのネット書店も、以前に買った本とよく似た本が出版されると、こんな本買いませんかとメールが送られてきますね。企業としては、ああいうものをもっと、個別化、精緻化したいのです。

 それから、最近、ビッグデータという言葉がニュースなどでよく出て来ます。個人情報保護法の今回の改正でも問題になっていました。我々はさまざまな個人情報をばらまいて生活しています。そうしたばらまかれた情報をもとに、どういう傾向の人は、どういった物を、いつ、どこで買うのかといった傾向をつかんで、それをマーケティングに生かしていきたいという考えですね。
 この傾向分析には、個人情報の中から個人を特定できる部分を削除した匿名情報を使うと言います。たしかにそうかも知れませんが、それで済むのでしょうか。
 平日の夕方に山手線に乗っている人たちは、どこの駅で降りて、どういう買い物をするのかといった傾向分析するためには、個々の個人を特定する情報は要りません。誰であるかなんて必要ないです。女性、男性、年齢ぐらいでいいかも知れませんね。でも、それで傾向分析できたとして、今度は具体的にどうやって働きかけるのか。分析しただけでは何の役にも立たない。

 例えば、30代の独身女性で、晩の8時ごろに毎日、山手線に乗って、新宿駅で降りる人はこういう買い物をする、こういうところに晩ご飯を食べに行く、そういう傾向が強いことがわかったとして、では、その判明したタイプの人にどうやって働きかけるのか。働きかけないとビジネスにならない。そういう傾向の人は誰なのかを、結局探し出して、その人にクーポンのメールを送りつけるなりしないと儲けにならない。ですから、個人情報を我々の知らないところで勝手に使って分析されて、最後はやっぱり「カモ」にされる、そういうことになるだろうと思います。

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マイナンバーとはいかなるシステムか (2) ―プロファイリングのシステム

2 プロファイリングのシステム

 マイナンバーは、プロファイリングのためのシステムです。
 私たちは、様々な個人情報を、様々な場所、場面―例えば、街路、駅、コンビニ、職場、学校、銀行、病院、役所等々―でばらまきながら生きています。ばらまかれる個人情報にマイナンバーを紐付けることができれば、情報が誰のものであるか特定し集める、すなわち名寄せが可能となります。こうした情報によって、私たち一人ひとりをコンピュータ上に仮想的に再構築することができるようになるのです。その人がどういう人なのかプロファイリングする。
 こうした作業は本人のあずかり知らないところで自動的に行われて行きます。コンピュータが勝手にやっていくということです。もちろんプログラムを書くのは人間です。操作をするのも人間ですけれども、自動的にどんどん蓄積されて、貯められていくということです。自分についてどんな情報がどこに蓄積されているのか、それを全て知ることは、今でもそうですが、将来はさらにむずかしくなるだろうなと思います。

 今のところ番号と紐付けられるのは税や社会保障などに関わる情報だけです。しかし、制度開始前にもかかわらず金融機関や健康診断等への利用拡大をうたった番号法の改正がなされようとしています。また財界は民間分野での利用を強く求めており、政府はこれに応じる構えです。
 こうしたことを見れば、今後、紐付けられる対象が際限なく広がっていく可能性は大きいと思います。そして集められる情報が多くなればなるほど、コンピュータ上に仮想的に再構築される私たちの像、虚像ですが、これはより詳細になっていくのです。

 今、虚像と言いましたが、コンピュータ上に構築された仮想の個人と実際に生きている生身の私たちとは決してイコールではありません。当たり前の話です。生きていく上で、表面的には取り繕っている、良い格好しているというのは、みんなそうでしょう。家へ帰ってからの行動を外でやったら、会社を首になったりだとか、「あいつ、何やねん」となったりしますよね。家へ帰ったらパンツ一丁でぶらぶらしているかもしれませんが、それを外でやったら大変なことになるわけです。そういうことがいっぱいあるわけですから、外でばらまいている個人情報だけを幾ら集めたって正確にはなりません。
 それからもう一つ、人には多面性があることです。表に出していないものとか、場面によって切りかえている場合もあるわけですね。ストレスがたまって、晩にどこかの飲み屋に行くとかして、そこで振る舞っている姿と会社で振る舞っている姿、家で振る舞っている姿というのは全部違うというのは普通の話ですよね。また、同窓会に行くと全然違う自分を演じる人というのもそんなに珍しくはないでしょう。こうしたことは普通にあるでしょうから、いくらかき集めても、本人とイコールにならないのです。しかし、コンピュータ上ではイコールだとして処理されていく。

 それから、こういうプロファイリングは現実にはもうクレジットカード番号だとかポイントカードなどを使いながらやられていますね。特にアメリカなどでは盛んに行われているようです。しかしですね、民間の番号では集める上での限界があるのです。
 クレジットカードは1人で何枚も持ってる場合が多いですし、解約してしまえば番号が消えてしまいます。そうなるとプロファイリングしたくても、もうそこからは何もできない。Tポイントカードなんかも1人で何枚も持っている人がいますね。私も3枚ぐらい持っています。では、この3枚が同じ人間のものだと、Tポイントを運営しているCCCが知っているのかというと必ずしもそうとはいないわけです。
 もし、クレジットカード番号とTポイントカードの番号がリンクされていたら、プロファイリングをするには便利ですよね。より多くの情報を集められる。しかし、現実には、そうはなっていない。CCCにクレジットカード番号を登録していたら別でしょうけど、全部がそうなっているわけではありません。要するに民間の番号だけではプロファイリングに限界があるのです。

 そこで、1人を生涯にわたって完全に特定できる番号があればと、経済界の人たちは思うわけです。個人情報を集めて利用したい経済界にとっては、マイナンバーの誕生は本当にうれしくてたまらないと思います。だからマイナンバーの利用を民間へとどんどん広げていきたいと、彼らは盛んに政府に働きかけているのです。

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マイナンバーとはいかなるシステムか (1) ―個人を特定するためのシステム

 2015年4月10日に横浜で開かれた神奈川県保険協会主催の講演会での黒田充の話しの一部をテキスト化しました。

 レジュメの「4.マイナンバーとはいかなるシステムか」の部分です。ただし、話がよりわかりやすいように、かなりの加筆をしています。


 私たちは日々生活を送る中で―例えば携帯電話、インターネット、クレジットカード、ICカード乗車券、これらを利用することで―多種多様な個人情報をばらまいています。これらの情報は収集され、記録され、様々に活用されています。また私たちの行動は、街角や駅、コンビニ、銀行、公共施設などに設けられた監視カメラ、防犯カメラに記録され続けています。こうした記録を避けて暮らすことは、少なくとも都市部では、もはや不可能でしょう。ですから、私たちの社会は監視社会と言わざるを得ないと思います。

 私たちがいるのは監視社会である、このことを前提にした場合、直面しているマイナンバー制度とは、どのような性格を持つシステムだと見れば良いのでしょうか。ちょっと考えてみましょう。
 もちろんこれからの話は、制度がスタートする2016年1月の時点で、こうなっているというものではありません。一度始めてしまうと、こうならざるを得ないのではないかという、そういう意味も含めての話です。システムが有する性格という面からマイナンバーを考えてみようというのです。

1 個人を特定するためのシステム

 まずマイナンバーは個人を特定するためのシステムです。一生にわたって我々をトレース、追跡することが可能になります。原則、番号は不変です。もちろん「絶対に不可」ではありません。マイナンバー制度の根拠法である「番号法」では、不正に用いられるおそれがあると認められる場合に限り、本人の申請又は市町村長の職権により変更することができるとなっています。
 これまでの住民票コードは、理由なしでも本人が申請すれば、幾らでも変えることができます。1日に何回でも変えようとすれば変えることもできるのです。しかし、マイナンバーは、不正に用いられるおそれがあると認められない限り、一生変わることも、変えることもできません。

 生まれたときに番号が付けられると、その番号が死ぬまでついて回ります。入園、入学の際にも番号とその記録が紐付けられることになるでしょう。ちょっと高校生のときにグレたら、それも含めて記録されるかも知れません。大学を出て、就職して、結婚して子供ができる。もちろん、こうしたことも番号と関連づけられて記録される。家族みんなで楽しく暮らしていたが、やがて寝たきりになり、死んでしまう。これらも記録される。
 こうした生涯にわたる全てが、その人がどういう人生を生きてきたのかが全部、番号と紐付けられて記録されてしまう。もちろんすぐにはなりませんが、マイナンバーの利用分野を税や社会保障から拡大し、民間利用も含めていけば、やがてそうなるわけです。

 これから生まれてくる人はまさにそうなりますね。そんな世の中が来ようとしています。今日、来られている人はそんなに若くはないようですが、私も含め私たちは、私たちの子どもの時の記録は、まずコンピュータには残ってないですね。まだ手書きの時代でしょう。今から、番号をつけたところで情報を昔のものまで遡って全部集めることはできません。子どものときの成績なんかもですね。しかし、将来的には、そうなってくると、恐らくできるようになる。だから、これから生まれてくる人たちは、まさに生涯にわたって、ずうっと番号によって人生を追跡されることになっていくだろうと、そう思います。

 ですから、例えば、年寄りになって寝たきりになってしまった時に、その原因はこれだと特定される可能性が出て来ます。それが本当の原因かどうかはわかりませんが、高校生のときにシンナーを吸っていたからこうなったのだと決めつけられる、自業自得だと、そういうことなのです。
 まあ、シンナーまで行かなくても、例えば、深酒を毎晩していたり、食生活に問題があって、健保組合などから生活改善するように指導を受けていた。しかし、指導に従わなかった。もちろんこういうことも番号に関連づけて記録されるでしょう。そして、年寄りになって色々と身体の不調が出て来た。その時に、若いときの記録を引っ張り出して、自業自得だと。「おまえ、若い時、こんなことしてたやないか」「あんたに手厚い保護なんてもったいない」と、そういうことになっていく、それがトレースなのです。ずうっと追跡していくわけです。例え氏名や性別を変えようと、番号は不変であり、追跡からは逃れることはできないのです。

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