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2015年3月29日 (日)

住民票を移せない人たちを切り捨てるマイナンバーの政府広報

 DV被害者の52.6%が「住所を知られないようにするため住民票を移せない」と回答。にもかかわらず住民票の異動を広報やテレビCMで脳天気に呼びかける無慈悲な政府のお話し

■マイナンバーCMの「住民票の確認」は、「住所地に住民票を移せ」ということ?

 上戸彩さんが出演するマイナンバーのテレビCMが3月9日から連日流されている。CMは「マイナンバー知ってる?編」と「マイナンバー住民票編」の2種類があるようだ。
 「住民票編」のCMでは「住民票の住所に届くから、住民票ちゃんと確認しとこ」と上戸さんに言わせているのだが、「住民票の確認」とは具体的にどういうことなのだろう。何をしろと政府は国民に求めているのか。

 CMではわからなかったこの謎が今日(3月29日)新聞各紙に折り込まれた「マイナンバー」の政府広報で判明した。

 A3版で4頁だてのカラー印刷というご大層な広報の表紙に「※マイナンバーの通知は、住民票の住所に送られます。(住民票の住所と異なるところにお住まいの方は、お住まいの市町村に住民票を移してください。)」とある。どうやら「住民票の確認」とは、住所地に住民票を移せということだったようだ。

20150329

■住所地に住民票を移せない人たち ――DV夫に住所を知られたくない

 住所地に住民票は当たり前のことであり何を今さらと思う人もいるかも知れない。しかし、現実には、本当に住んでいる所と住民登録の住所が異なっている人が多数いる。例えば、配偶者によるDVを逃れるために飛び出したが、移り住んだ場所を配偶者に知られると追いかけてくるのではないかと恐れ、住民登録を移動させていない、移動させることが出来ないケースがある。

 内閣府が「配偶者等から暴力を受けた者で、現在自立して生活している者、又は自立に向けて生活している者」を対象に2006年に「配偶者からの暴力の被害者の自立支援等に関する調査」を行っている。これによれば「あなたが相手と離れて生活を始めるにあたって、どのようなことに困りましたか。(複数回答)」の質問に対して、52.6%の人が「住所を知られないようにするため住民票を移せない」と答えている。

201503292

 こうした現実があるにもかかわらず、マイナンバーの通知を受けるために住民票を移せと一方的に広報するのはあまりにもまずいのではないか。因みに、この調査も、マイナンバーの政府広報も所管は同じ内閣府である。

■政府の「DV対策方針」は、住民票を移せない人がいることが前提

 ところで政府は、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」第2条の2に基づき「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等のための施策に関する基本的な方針」(PDF)(内閣府、国家公安委員会、法務省、厚生労働省)を2013年に策定している)。
 そこには次のような記述がある。長くなるが紹介する(赤色強調は引用者)。

7 被害者の自立の支援
(8)子どもの就学・保育等
ア 就学
 子どもの就学については、様々な事情によって住民票の記載がなされていない場合であっても、その子どもが住所を有することに基づいて就学を認める扱いがなされている。また、転出先の学校においては、被害者等の安全を確保するために情報提供の制限が必要な場合においては、転出元の学校へは転出の事実のみを知らせるなどの対応も考えられる。これらのことを踏まえ、支援センターにおいては、被害者等の安全の確保を図りつつ、子どもの教育を受ける権利が保障されるよう、教育委員会、学校と連絡を取るとともに、被害者に対し、必要な情報提供を行うことが必要である。

イ 保育
(ア)保育所への入所
 (引用者略)
 国においては、市町村に対し、保育所へ入所する子どもを選考する場合においては、母子家庭等の子どもについて、保育所入所の必要性が高いものとして優先的に取り扱う特別の配慮を引き続き求めるよう努める。また、保護者が求職中であっても保育所への申込みが可能であること、戸籍及び住民票に記載がない子どもであっても、居住している市町村において保育所への入所の申込みが可能であること、並びに被害者が加害者の元から避難したことにより世帯の負担能力に著しい変動が生じ、費用負担が困難と認められる場合には、その個々の家計の収入の実態を踏まえた適切な保育料が徴収されるようにすることについても、市町村に対し周知徹底に努める。

 (引用者略)

エ 予防接種等
 支援センターは、子どもとともに遠隔地で生活する被害者について、住民票の記載がなされていない場合であっても、居住していることが明らかであれば、滞在先の市町村において予防接種法(昭和23年法律第68号)に基づく定期の予防接種や母子保健法(昭和40 年法律第141号)に基づく健診が受けられることについて、事案に応じた情報提供等を行うことが必要である。
 国においては、こうした支援が適切に行われるよう、市町村等関係機関に対する周知に努める。

(9)その他配偶者暴力相談支援センターの取組
 (引用者略)
 また、住民票の記載がなされていない場合であっても、介護保険法(平成9年法律第123号)に基づく要介護認定等を受けて、施設介護サービス費の支給等の介護給付等を受けることが可能であることや、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)に基づく施設入所支援等についても同様に、支給決定を受けることが可能であることについて、事案に応じた情報提供等を行うことが必要である。
 なお、住民票を移していない場合等の一般旅券の発給に関しては、各都道府県の一般旅券申請窓口に相談するよう、事案に応じた情報提供等を行うことが必要である。

としている。
 すなわち、DVにより住所地に住民票を移せない人がいることを前提に、どう支援していくかが具体的に考えられ政府として方針化しているのである。

■市町村も住民票を移せないDV被害者を支援

 方針は、また「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」第2条の3第1項に基づく基本計画の策定を地方自治体に要請している(都道府県はすべて策定済み)。
 こうした要請に応え、例えば兵庫県の尼崎市では「配偶者等からの暴力(DV)対策基本計画」が2012年に策定されている。そこにもDVにより住所地に住民票を移せない人がいることを前提に次の様に書かれている。

5 施策の展開
基本目標3 自立・生活再建の支援
方針4 子どもへの支援
現状と課題
 (引用者略)
 また、子どもの就学に関しては、被害者が住民票を異動していない場合でも区域外就学手続を行うとともに、転学先や居住地等の情報管理について配慮をしている。保育所入所に関しても、市外に住民票がある被害者でも市内居住者と同様の取扱いとし、情報管理について配慮をしている。

今後の取組み
施策の方向1 就学等における支援と配慮等
住民票を異動していない被害者の就学手続について、引き続き対応する。保育所入所手続についても、市内在住とみなして申請を受け付ける。
・子どもの転居先や居住地等の情報管理について、学校、幼稚園、保育所への周知を徹底する。

■にもかかわらず「住民票を移せ」の脳天気な政府広報

 このような施策を展開している政府がマイナンバーの導入にあたってすべきなのは、CMや新聞折り込みで「マイナンバーの通知を受けるために住民票を移せ」と脳天気に繰り返すことではないだろう。
 「DVなどやむを得ない事情により住所地に住民票を移していない、移すことが出来ない人は、マイナンバーの通知を届けることができませんので、相談窓口までご連絡ください」ではないだろうか。もちろんその前提として政府が責任を持って、相談窓口の設置(市町村単位など)を含む具体的な対応策をとることが必要なのは言うまでもない。

■マイナンバー通知がDV夫に届く恐怖

 また、もう一点、マイナンバーの通知で問題になるのは、通知が住民登録地に届くと、DVの加害者に被害者のマイナンバーが知られてしまうことである。政府広報が「マイナンバーは一生使うもの。大切にね!」と呼びかけていることからも、マイナンバーが知られることによって、あらたなる被害が生じることは容易に想像できる。またそうした想像から恐怖にかられている被害者も多いのではないだろうか。
 だからこそ、「マイナンバーの通知を受けるために住民票を移せ」などと無責任に広報するのではなく、政府は具体的な対応策を国民にわかりやすく、かつ早急に示すべきであろう。

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